零はあわてて、針金のロボットみたいに見える自分の手を握った。しかし、触ってみるとちゃんと感覚があり、力も暖かさも感じる……。しかし……、向こうが丸見えで透け透けなのだ。
 零はしばらく考え込む。この非常識な事態をどう考えたらいいのだろうか……?
 しかし、幾ら考えても答えは一つしか考えられなかった。
 そして、ゆっくりと口を開く。
「こう……、計算させてるんですね……。なるほどこれなら……」
 そう言って零はぐったりとうなだれると、しばらく動かなくなった。
「零……、大丈夫?」
 レオは零の針金づくりの顔をのぞきこみ、心配そうに言う。
 零は針金の手でジョッキをガッとつかむとそのまま一気飲みし、観念したように言った。
「全て理解しました。この世界がどうやって作られているかも想像がつきました」
「うんうん、零は優秀だなぁ」
 シアンはうれしそうにして零の身体を元に戻した。
「で、サーバーが海王星にあるってことですよね?」
「そうそう」
「でも、全てが情報でできてるってことは、そこも根源じゃないってことですよね?」
 零は鋭く切り込む。
「ほほう、お主すごいな」
 レヴィアは感心して言った。
「我々は広大な情報の海に生まれ、生きる情報生命体……。あなた達の異世界はこの地球とどういう関係なんですか?」
 零は吹っ切れたように饒舌(じょうぜつ)に聞いた。
「パラレルワールドじゃな。多くの分身(インスタンス)の中の兄弟世界じゃ」
「でもですよ? そんなことができるなら、私が書くようなプログラミングコードなど自動で合成できちゃうんじゃないですか?」
「そんなことやったら多様性が失われるじゃろ?」
「えっ? 多様性?」
「効率を求めるならそもそも世界など作らんよ。我々に求められてるのは多様性じゃ」
「なるほど! なるほど! 我々は試されてれるってことですね? この宇宙を(つかさど)る大いなる存在に!」
 零は興奮して言った。
「まぁ……、そうじゃな……」
「その大いなる存在って誰なんですか!?」
 零は壮大な宇宙の神秘に触れ、大興奮して聞いた。
 レヴィアは渋い顔をしながらシアンを見る。
「きゃははは!」
 うれしそうに笑うシアン。
「まぁ、それはデリケートな問題じゃな」
 レヴィアはお茶を濁す。