「ぐ、具体的には何作ったらいいんですかね?」
 するとレヴィアは書類をドサッとテーブルに置いた。
「要件定義と画面遷移図はやったので、レビューから入って欲しいんじゃ」
 驚く零。まさかもうここまで進んでるとは思わなかったのだ。
 急いで書類を手に取り、パラパラと見ながら零は言った。
「えーと、これは……」
「中央銀行のシステムじゃ。これ以外にも決済システム、預金システム、個人情報管理システムなどがあるぞ」
「ちゅ、中央銀行!?」
「そうじゃ、貨幣を発行し、金利を設定し、銀行にお金を貸し出したり国債を管理したりするシステムじゃ」
「ちょっと待ってください、私は中央銀行の業務なんてわかりませんよ?」
「大丈夫、必要な機能は全部そこに書いとる」
 そう言いながら、レヴィアは超レアな焼き肉を頬張った。
「これは……、責任重大ですね……」
 考え込んでしまう零。
「大丈夫、僕がちゃんとチェックするからさ」
 シアンは楽しそうにそう言って、ピッチャーをゴクゴクと一気飲みして空けた。
「あ、ありがとうございます。ちなみにサーバーとかはどこに置くんですか?」
「海王星だよ」
「えへぇ!?」
 レヴィアはそう叫んでせき込んだ。
「ダ、ダメですよ! あそこは業務システムで使っていい所じゃないですよ」
「えー、だって、安定したシステム基盤があるなら使わなきゃ損でしょ?」
「そりゃ、ここ数万年ほどは最高に安定してますが……」
「大丈夫、僕が繋げておくからさ」
「……。私は知りませんよ」
 そう言ってレヴィアはヤケクソ気味に焼き肉を頬張り、ビールで流し込んだ。
 零は話が呑み込めなかった。数万年安定稼働している海王星のサーバー。地球の常識とはかけ離れている。幾ら異世界だと言っても飛躍し過ぎではないだろうか?
「あの……、海王星というのは……?」
 零がおずおずと聞く。
「太陽系最果ての惑星だよ」
 シアンがニコニコしながら言う。
「え!? 本当にその海王星なんですか? 人がいけるような距離じゃないですよ!?」
「この世界は全て情報でできてるんだ。この意味、零なら分かるんじゃない?」
 シアンはちょっと挑戦的な笑みを浮かべた。
「全て情報……? それはつまり物質も……位置も距離も……合成された幻想……つまりゲームみたいな仮想現実ってことですか?」
 零は信じられないという表情で淡々と答えた。