零はその美しいまでの鋭い視線にゴクッとツバを飲む。この答一つで採否が決まる事を本能的に感じたのだった。ここですぐに『はい』と言えなければ不採用だろう。しかし……、異世界など地球の常識が全く通じないはず。どんなリスクがあるか分からない。命の危険だってあるだろう。
 零はうつむいて逡巡(しゅんじゅん)する。夢見ていた世界に飛び込むなら今この瞬間しかない。全てを捨て、命の危険を冒してでも行くか……。零はグッと奥歯をかみしめた。
 ふうっと大きく息をつくと、零は腹を決め、バッと顔を上げる。そして、
「ぜひ働かせてください! 必ずやご満足いただく結果をお見せいたします!」
 そう、明るい顔で言った。
 オディーヌはニコッと笑うと、
「結果はまたメールでお知らせします。本日はありがとうございました」
 そう言って丁寧に頭を下げた。

 果たして、翌日零のところに採用通知メールが届いたのだった。
 こうして日本のITエンジニアがジョインする事になった。











3-13. 少年の外交

「次は移民の受け入れじゃな」
 レヴィアが言った。
「スラムのたくさんの人たちに来てもらわないとね」
 レオはニコニコして言う。
「しかし、どうやって周知し、どう来てもらうか……うーん」
 レヴィアは腕を組んで悩む。
「お父様に相談してみるわ!」
 オディーヌが言う。
「王様、いいって言うかな?」
 レオは心配そうにオディーヌを見つめる。
「スラムの貧困層たちは犯罪の温床となったりして、国としても手を焼いていたから協力してくれると思うわ」
「良かった!」
「でも……、そんな犯罪の温床となってる人たちを連れてきちゃったら、この国壊れちゃわないかしら……」
「うーん、衣食住を保証してあげれば変わると思うんだけどね……」
 するとレヴィアが、スマホみたいな小さな装置をレオに渡して言った。
「そういうお主らにこれをプレゼントしよう」
「え? これは何?」
「ウソ発見器じゃ。こうやってグラフが出て、ウソだったら赤の方に振れ、本当だったら緑の方に振れるのじゃ」
「これって……どう使うの?」
 レオは不思議そうに言った。
「試しに『レヴィア様は凄い』って言ってごらん」
 レヴィアはニヤッと笑って言った。
「分かったよ。レヴィア様は凄い!」