ステーキは表面はカリッと軽く焦げるように焼かれているが、切り口は鮮烈な赤い色のままで、美味そうな肉汁がじわっと浮かんでいる。
「あっ! 僕も!」
 レオ達もやってきてテーブルを囲む。
「シアン様、こちらでも食べるんですか?」
 レヴィアはジト目でシアンを見る。
「別腹だからね!」
 そして肉汁が(したた)るぶ厚いレアの松坂牛をほおばり、
「うほぉ! こっちの方が美味い!」
 と、歓喜の声を上げ、恍惚とした表情を浮かべた。

 それを見たみんなは、負けじとステーキにかぶりつく。
「えっ!? これ本当に牛肉ですか?」
 オディーヌがビックリしてレヴィアに聞く。
「これは松坂牛、日本最高級の牛肉じゃよ」
「こんな柔らかくて芳醇なステーキ生まれて初めて……。王宮でも食べられないわ……」
 オディーヌも恍惚として旨味に(しび)れている。
「かーっ! 美味いっ!」
 レヴィアも感激する。
「レヴィア! 酒だよ酒!」
 シアンがせっつく。
 レヴィアはモグモグとほお張りながら空間を切り、中から赤ワインを出した。
「こんなに美味い牛肉にはこういう重い赤ワインが良さそうですな」
 そう言いながら指先で器用にコルク栓を抜くと、ワイングラスに注いでシアンに渡す。 シアンはクルクルっとワイングラスを回し、空気を含ませると、ふんわりと立ち上ってくるスミレの香りにうっとりし、クッと飲んだ。
 そして、目を大きく見開くと、
「いやこれ、最高だね……」
 そうつぶやくと幸せそうな表情を浮かべ、目をつぶった。

     ◇

 その後何本かワインを開け、ずいぶんいい気分になったころ、シアンがレオに聞いた。
「で、国名はどうするの?」
「えっ? 国名……そうだよね、決めないと……。みんなが喜んでいるイメージの名前がいいんだよね……」
 そう言いながらレオは首をかしげた。
 するとオディーヌはMacBookを叩いて候補を探す……。
「喜び……ねぇ……、ジョイ、デライト、アレグリア……?」
 と、つぶやいた。
「アレグリアか……、少しひねってアレグレア……」
 レヴィアが首をひねりながら言う。
「それはひねったうちに入らないって!」
 シアンが笑う。
 渋い顔のレヴィア。
 レオが続ける。
「じゃあアレグリト……、アレグリル……、アレグリス……、ん!? アレグリスはいいかも!」