レオはキツネにつままれたような顔をして考え込む。物心ついてからずっと奴隷だった自分が、なぜ王女も持ってないようなカギを持っているのか……。カギとは何か……いつか分かる時がやってくる。それは楽しみでもあり……、一抹の不安を予感させた。








3-8. MacBook Pro

「シアンって凄いわ。何だってできちゃうんですね」
 オディーヌは感嘆して言う。
「いやいや、人間についてはダメだね。人間は複雑すぎるから簡単なデータ処理じゃどうしようもないんだよ」
 シアンは肩をすくめる。
「そうか、だから国づくりでも人については僕がやるんだね」
 レオが横から言う。
「そうそう。人間はコピーしたりできないからね。今いる人たちの心を動かさないとダメで、そういうのに僕は向いてない。そこはレオとオディーヌに期待してるんだ」
 そう言ってニッコリと笑った。
「あれ? 私は?」
 レヴィアが寂しそうに突っ込む。
「あー、もちろん! レヴィちゃんにも期待してるよ!」
 シアンは焦りながらレヴィアの肩をポンポンと叩いた。
「いいですよ……、私になんて気を遣わなくても……。ちゃんと二人をサポートしますから……」
 すっかりいじけてしまうレヴィア。
「そうそう! パルテノン神殿! レヴィちゃんに合わせてアレンジしといたよ!」
 そう言ってシアンはテーブルの上に、純白の柱がきれいに並んだ神殿の模型を出した。それはパルテノン神殿をベースにして、屋根にドラゴンの意匠を加えた荘厳なものだった。
「うわぁ!」「素敵……」
 レオとオディーヌは思わず声が出る。
 すねたレヴィアはチラッと眺め……。
 口元をちょっとニヤけさせながら、
「悪く……ないかもしれないですね……」
 と、淡々と言った。
「またまた~、嬉しいくせに~」
 シアンがレヴィアのほほを指先でツンツンとつついた。
「うしし、いいものですな」
 レヴィアはそう言って相好を崩す。
「そしたら、エーイ!」
 シアンは山に向かって両手を開いた。
 直後、山の稜線が爆発し……、爆煙がゆっくりと流れていくと、白亜の神殿が煌めく。
「うぉぉぉ!」
 レヴィアは思わず叫ぶ。