食後に緑茶をすすりながら、みんな無言で作りかけの街を眺めた。
 澄みとおる青空にポコポコと浮かぶ白い雲。そして燦燦(さんさん)と照り付けてくる太陽は壮観なタワマン群を宮崎の大地に浮かび上がらせる。朝には山だらけだった土地に林立する高層ビル群、それはとても現実離れした夢物語の様な風景だった。
「ここに十万人が住むんだね……」
 まだ実感がわかないレオがつぶやく。
「そうだよ、これがレオの描いた夢の形だよ」
 シアンが言う。
「なんだかちょっと……怖くなっちゃうね……」
「あれ? そんなこと言っていいの?」
 シアンは意地悪な顔で笑った。
「あっ、もちろんやるよ! 最後までやり抜くよ」
 レオは焦って言い、シアンはうなずきながら、愛おしそうにレオの頬をなでた。
「でも……、こんな建物、どうやって出したの?」
 不思議そうにレオは聞く。
「え? 世の中にはいろんな人がいてね、こういう建物のデータを緻密(ちみつ)に設計する事に人生をかけちゃう人がいるんだよ」
「これはその人の作品……なんだね?」
「そうそう。その人が作って公開しているのを持ってきて具現化させたんだ」
「具現化……。シアンがそんなことをできるのは、宇宙の(ことわり)を知ってるから?」
「そうだよ」
「この世界は0と1の数字でできてるって……言ってましたよね?」
 オディーヌは横から聞く。
「そうそう、君たちも全部0と1だよ」
 シアンはニヤッと笑いながら言った。
「それ……、全く実感わかないんですよね。もちろん、渋谷で見せてくれた宇宙の根源(エッセンス)が紡いでいるというのはなんとなくわかるんですが、自分も世界も数字だというのがピンと来なくて……」
「うんうん、じゃあ、こうしたらいいかな?」
 シアンは手を打ってパン! と大きな音を立てた。
 すると世界はすべてが色を失い、真っ白な世界に描かれた線だけの世界が展開した。テーブルも部屋もタワマンも海も大地も、全てのものが線だけで雑に描かれたワイヤーフレームになったのだ。それはまるで工事現場の鉄骨だらけの風景の様な無味乾燥な世界に似てるかもしれない。ただ、シアンだけはいぜんとして綺麗な女の子のままだった。
「え!? これは一体……」
 オディーヌは自分の手を見たが、手も指も針金づくりのロボットのように線で描かれた姿になっていた。