「これは生の魚じゃな」
「えっ!? 魚は生で食べちゃダメなんだよ!」
 驚くレオ。
「わはは、日本の寿司はその辺考えて作られとるから安全じゃよ」
「いただきまーす!」
 シアンが大トロをつまんでパクリと一口でいく。
「えっ!? 手で食べてる!」
 レオはビックリ。
 そして、シアンは目をギュッとつぶって、
「うほぉ……、うまぁぁ……」
 と、恍惚とした表情を見せる。
「寿司は手で食べてもいいんじゃが……我は(はし)で行かせてもらう」
 レヴィアはサーモンを取って食べた。
「サーモンから行くの? おこちゃま? プクク……」
 シアンが冷やかす。
 レヴィアはモグモグと味わいながら、
「おこちゃまでもいいんです! 美味い物から行くんです。そもそも、最初はタイかヒラメが王道ですよ?」
 と、言い返した。
「ふーん、そうなんだ……」
 そう言いながらシアンはまた大トロをつまんだ。
「あー! ダメですよ! 大トロは一人一つです!」
 レヴィアが突っ込む。
「ふーん、そうなんだ……」
 そう言ってシアンはパクリと食べた。
「もぉ……。お主らも早く食べて! 全部喰いつくされちゃうよ!」
 レヴィアはレオとオディーヌに言った。
「じゃあ一つ……」
 レオは恐る恐るカンパチを手で取り、醤油をつけて食べる……。
「……、ぐっ!」
 レオは急に真っ赤になって洗面台に走った。それを見たシアンは、
「レヴィア、ワサビ抜かなきゃ……」
 そう言いながらサーモンをつまんだ。
「え? 私のせい?」
 レヴィアは少し困惑し……、トボトボとせき込んでいるレオのところへ行き、背中をさすった。

「えっ? 何があったんです?」
 オディーヌはシアンに聞く。シアンはマグロのネタをはがして、緑色のワサビを見せた。
「この香辛料がね、美味しいんだけど辛いんだよ。オディーヌも辛いの苦手ならはがして食べて」
「そ、そうなのね……」
 オディーヌはそう言うとマグロの赤身を持ち上げ、しげしげとワサビを眺めた。
 そして、丁寧にワサビをはがし、マグロの赤身を恐る恐る食べる……。
「あら……。美味しい!」
 オディーヌは目を輝かせて言った。
「美味しいでしょ。僕、ここの寿司はお気に入りなんだ」
 そう言ってシアンはニコッと笑うと、えんがわをつまんだ。











3-7. 動かせる内臓、肺