「ぬーん、浄水場……十万人分じゃろ? どのくらいのサイズじゃ? 一人毎日二百リットルとして……、商業施設が……、うーん……」
 レヴィアはぶつぶつとそうつぶやきながら、『脚の湖』の方へと飛んで行った。













3-6. 寿司の洗礼

 昼過ぎには主要部の電気と水道が開通したので、一行はタワマンに入る。
 大理石造りの広いエントランスには間接照明が上品に並んでおり、脇の壁面には滝のように水が流れ、まるで高級ホテルのロビーのようだった。
「うわぁぁぁ……」「すごい……」
 レオもオディーヌも瞳をキラキラさせながら歩く。
 
「こっちだよ~」
 シアンが案内する先にはエレベーターホールがあった。
 ポーン! とエレベーターがやってきて、レオが恐る恐る最上階のボタンを押す。
 高速に上昇するエレベーター。
「耳がツーンとするね……」
 レオがシアンに言う。
 シアンはそっとレオの頬をなで、耳を治した。

 ポーン!
 あっという間に五十階に着く。
 長い廊下の角部屋まで行ってドアを開けると、豪華なメゾネットつくりのパーティールームになっていた。窓の向こうには海が見え、風力発電の巨大な風車とどこまでも続く水平線が広がっている。
「うわぁ!」
 レオは走って窓に張り付くと、しばらく真っ青な海を眺めていた。
 オディーヌは辺りをキョロキョロと見回しながら、皮張りのソファーに無垢一枚板の大きなテーブル、シックな間接照明など豪華な調度品に圧倒されていた。そして、
「どこの部屋もこうなの?」
 と、シアンに聞いた。
「ここは特別な共用のパーティールーム。他の部屋はこんなに広くないよ。でも、家具はここと同じだよ」
「全部この家具なの!? すごい……贅沢ね……」
 そう言って絶句した。
 もちろん、王宮の家具や調度品は金をあしらってあったりして豪華ではあるが、オディーヌにはシンプルでシックなこの部屋の方が上質に感じられてしまっていた。
 スラムの人たちがこんな素敵な部屋で贅沢な家具を使うようになる。それは特権階級として君臨していた王族としては、なかなかに受け入れがたい想いがあるようだった。

        ◇

「お昼にするぞー」
 レヴィアはそう言って、シアンに頼まれた握りずしを持ってきてテーブルに並べた。
「うわぁ、綺麗……。でもこれは……何?」
 レオが聞く。