シアンはそう言いながら、海の沖の方に両手を向けて何かつぶやいた。
 すると、上空はるか彼方から何かが下りてくる。
「あれは何?」
 レオは海の方を見あげ、手で日差しをよけながら聞く。
「風車……なの?」
 オディーヌは不思議そうに言う。
「そう、風力発電だよ」
 そう言いながらシアンは三本羽根の風車を次々と十本、沖に建てた。
「ちょっと……、大きくないですか?」
 レヴィアが不思議そうに聞く。
「高さ一キロメートル、一本で百MWの発電量だよ。」
 シアンはドヤ顔でいう。
「一キロ!? 技術的にそんなもの作れるんですか?」
「物理攻撃無効属性つけたから、台風来ても大丈夫だよ」
 ニコニコしながらそう言うシアン。
「……。チートだ……。ガハハハ……」
 思わず天をあおぐレヴィア。
 続いてシアンは、ツーっと飛びあがって道の予定地の上へ行くと、エイッ! と言って両手を道に沿って振り下ろした。すると、ズーン! という地響きが起こり、人が入れるくらいの大きな溝が何キロにもわたって一直線に通った。続いて赤い魔方陣を展開すると、溝へ向けて鮮烈な熱線を照射しはじめる。

「きゃははは!」
 うれしそうな声が響き渡り、溝からはジュボボボボ! という土が溶ける音と共に焼け焦げた臭いが漂ってくる。
「これは……何?」
 レオが怪訝(けげん)そうな顔をしてレヴィアに聞く。
「共同溝じゃな、電気、水道、光ファイバーなどを通すんじゃろう」
 シアンは飛び回りながら次々と道に溝を掘っては熱線で固めていく。
 しかし、主要幹線道路だけでも数百キロメートルに及ぶ。それは大変な作業だった。
 三人は超人的なシアンの工事を眺めていた。
「これが出来たらあそこに住めるんですか?」
 オディーヌはレヴィアに聞く。
「浄水場と下水処理場と、後は風車からの電気の配線じゃなぁ」
 レヴィアがそう答えると、シアンがツーっと飛んできて言った。
「じゃあ、それ、レヴィアよろしく!」
「えっ!? 規格とかは?」
「適当に決めて。日本クオリティでよろしく! きゃははは!」
 そう言ってまた飛び立っていった。
 唖然(あぜん)とするレヴィア……。
 しかし、シアンばかりに活躍させてもいられない。ドラゴンとしての誇りもあるのだ。子供たちにいい所を見せておかねば。