やがて蜘蛛は海の上に降り立ち、その衝撃で津波が発生して海岸線を巨大な波が洗っていく。そして、程なく衝撃波がコテージを襲った。
 ズン!
 という音と共にコテージが大きく揺れる。
「うわぁ!」「キャ――――!」
 叫び声が響いたが、シアンは気にもせずに、
「全長253キロメートル、僕のペットだよ」
 と、うれしそうに紹介した。
「ぺ、ペット……」
 レオは絶句した。
 蜘蛛はあまりに巨大すぎて、上部はまだ宇宙にいる。直径数キロの足は雲をはるかに超え、宇宙までまっすぐに伸びているのだ。
 その圧倒的なスケールに一同は言葉を失い、ただポカンと口を開けて宇宙まで届く巨大構造物を見つめていた。

「さて、整地しよう。クモスケ、カモーン!」
 そう言って、シアンはクモスケに指示を出した。
 太さ数キロもある足がゆっくりと持ち上げられ、山地の方へ移動してくる。見た目ゆっくりではあるのだが、それはあまりに大きすぎるからであって、実際の速度は音速を超えている。
 そして、山地上空から一気に足を下ろし、蜘蛛の足は山地にめり込んだ。
 直後、衝撃波と共に轟音が響き、コテージは大きく揺れ、ビリビリと振動する。
「ひぃ!」「うわぁ!」
 レオとオディーヌは窓枠にしがみつき、何とか耐える。

 蜘蛛がゆっくりと足を持ち上げると、そこには直径数キロの巨大なクレーターができていた。







3-2. クモスケの逆襲

「よしよし」
 シアンは満足そうにそう言うと、さらにクモスケに指示を出してクレーターの隣に足を下ろした。
 再度揺れるコテージ。
 また、クレーターが増えた。
「ちょっと待ってください、これじゃ穴だらけで土地としては使えないですよ」
 レヴィアが突っ込む。
「うーん……。じゃ、ちょっと(なら)してみるか……」
 シアンはそう言って、目をつぶった。
 クモスケは下ろした足をそのままに海の方へとズズズズ! と動かしていく。
 巨大なU字の谷が海まで伸びる。
「谷でも使いにくいですよ」
 レヴィアがクレームを入れる。
「じゃあ……」
 シアンはさらに複雑な指示をクモスケに与える。しかし、クモスケは止まったまま動かなくなった。
「おい、クモスケ! どうした!」
 シアンはそう言ってフニフニと両手を動かした……。