シアンはニッコリとして言った。
「わ、分かりました……」
「僕はベンティアメリカーノ、ホットね。みんなもコーヒー?」
 シアンはそう言って見回す。
 すると、レオが
「僕は……ミルクがいいな」
 と、恥ずかしそうに言った。

     ◇

 通りに面した、全面ガラス張りの壁のそばに席を取る一行。
 国道十五号線は産業道路であり、たくさんのトラックや自動車が行きかっている。
「うわぁ、すごいね……」
 レオはその交通量に圧倒される。
「物流は国の(かなめ)じゃからな。国づくりというのは道も輸送手段も重要じゃぞ」
 レヴィアはそう言ってコーヒーをすする。
「そんなの空間繋げちゃえばいいよ」
 シアンは呑気にコーヒーをすすりながらいう。
「えぇっ!? そんなの管理局(セントラル)に怒られますよ!」
「僕がいいって言ってたって伝えて」
 そう言いながらシアンはピンクのドーナツをパクリと食べた。
「……。報告書が……」
「レヴィアは細かいなぁ、『シアンにやれって言われた』とだけ書いとけばOKだよ」
 シアンはそう言って、レヴィアの背中をバンバンと叩いた。
「……。本当にそう書きますからね?」
 レヴィアはジト目でシアンを見る。
 シアンはうなずきながらスコーンに手を伸ばした。

「空間繋げるってどこ繋げるの?」
 レオが聞く。
「主要都市の倉庫になるじゃろうな。各都市に倉庫借りて、そこをうちの倉庫とつなげる。そうしたら輸出入が一瞬でできる……。なんか怖いのう」
「ちょっとやりすぎかな? 利用期間に制限つけようか? 三十年間だけとか」
 シアンはそう言ってコーヒーをすすった。
「三十年……、それならいいですな」
 レヴィアはうんうんとうなずいた。

 





3-1. 宇宙サイズの蜘蛛

 隣の席の二人連れが何やら揉めている。
「それは女神様に失礼です!」
 金髪碧眼(へきがん)の少女が大学生風の男に怒った。
 レヴィアはチラッとそちらを見ると、
「あれ? 異世界人じゃな……」
 と、つぶやいた。
「異世界人って、私たちみたいな?」
 オディーヌが小声で聞く。
「そうじゃ……、あー、ミネルバのところの子じゃな。さすが田町、いろんな星の人がおる」
「この街はそんなに特別なんですか?」
「宇宙を(つかさど)る組織があるんじゃよ。いわば全宇宙の中心じゃな」