オディーヌは起きない二人にちょっとイラっとして、
「私たちはお腹すいたので、起きて!」
 そう言ってシアンの頬をペチペチと叩く。
「うーん……」
 シアンは腕をピューッと動かして寝返りを打った。その時、指先に沿って空間が裂けて切れ目が顔をのぞかせる……。
「へ!?」
 慌てるオディーヌ。
 すると、その空間の向こうから漆黒の指がニョキニョキと出てきて、ググっと空間の裂け目を広げた。
「キャ――――!」
 そのあまりの異様さにオディーヌは後ずさりする。
 出てきたのは漆黒の霧の化け物だった。
 全身が闇の(キリ)でできた異形の存在は、シアンを見つけると赤い目を光らせていきなりシアンの細く白い首を両手でキューッと締め上げる。
「グエッ!」
 寝込みを襲われたシアンは、変なうめき声を上げ、目を覚ます。
 化け物はさらに凄い力でシアンの首を締め上げた。

 シアンは真紅の目を光らせ、
「ウゥ――――ッ!」
 とうなり声をあげると、手のひらを化け物に向け、激烈な閃光を放つ。
 ビョヨヨヨ――――! と、異常な高周波音が響き渡り、部屋は鮮烈な光に埋め尽くされた。
「うわぁ!」
 異様な展開にレオも起きて、ベッドから転がり落ちる。
 部屋には焦げ臭いにおいが充満した。
「グギャァァ!」
 化け物は閃光を浴び、苦しそうにしながら空間の裂け目へと逃げ帰っていく。
「ケホッケホッ……、待ちな!」
 シアンはのどを押さえながらそう叫ぶと、裂け目の中に上半身を突っ込んで何やら攻撃を仕掛け続けた。裂け目からは激烈な閃光がほとばしり、激しい爆発音が響いてくる。
 レオは寝ぼけ眼でオディーヌと目を合わせ、お互い呆然としていた。

「もー、油断も隙も無いんだから!」
 シアンは裂け目から出てくると、プリプリとしながら言った。
「でも、その裂け目作ったのはシアンですよ?」
 オディーヌが突っ込む。
「え? 僕?」
 ポカンとするシアン。
「寝返りを打ちながら空間を切ってましたよ」
「え? あ? そうだった? で、朝食は何?」
 と、言ってニコニコしながらオディーヌを見る。
 オディーヌは軽いノリにちょっと面食らいながら、
「レヴィアさんがテーブルで待ってます」
 そう言って部屋の外を指さした。











2-16. スタバで朝食を

「レヴィアおはよ~」