シアンは立ち止まり、道端のイチゴのスイーツショップを指さした。大きなイチゴがいくつも串に刺さり、飴でコーティングされていてとても可愛い。
「あー、はい。お主らも食べるか?」
 レヴィアはレオとオディーヌに聞く。
 二人とも遠慮がちにうなずいた。
「じゃ、四本おくれ!」
 レヴィアはそう言ってイチゴ串を受け取った。そして、iPhoneを機械にかざしてピピっと鳴らす。
「まいどあり~」
 オディーヌはその様子を見て驚いて聞いた。
「えっ!? 今のでお金を払ったんですか?」
「そうじゃよ、電子決済」
 そう言ってレヴィアはイチゴにかじりつき、
「おぉ、これは美味いのう」
 と、パアッと明るい顔をした。
「もしかして、その道具の中にお金が入ってるんですか?」
「これはただの端末じゃ。お金のデータはサーバーと言って遠い所の機械の中で管理されておる」
「それはつまり……、価値の創造……ですか?」
「お、良く分かっとるのう。現金にしちゃったら持ち主だけの所有物じゃが、サーバーに置いておけば保管者もその価値を間接的に利用できる。実質的に金の量が増えるんじゃ」
「すごい……」
「金融工学の一つじゃな。この国は銀行や証券や金融商品で高度に金の価値を何重にもふくらまし、現金の五十倍もの量のお金が社会を駆け巡って高度に繁栄したんじゃ」
「うわぁ……。それ、国づくりには絶対必要ですね」
「ま、そうじゃろうな。後で教科書をあげよう」
「あ、ありがとうございます! やっぱり来てよかった!」
 オディーヌはうれしそうに笑った。
「よーし、展望台行くぞー!」
 あっという間に食べ終えたシアンはそう言って歩き出した。
「あー、ちょっと待って!」
 レオは急いでイチゴを頬張り、シアンを追いかける。
「あのお方はせっかちじゃのう……。でもまあ展望台はいい選択かも知れんな」
 そう言いながらレヴィアはオディーヌと一緒に追いかけた。

         ◇

 ポーン!

 高層ビルの四十五階にある展望台にエレベーターがついた。
 ドヤドヤと他の客と一緒に降り、エスカレーターを上る一行。すると、ガラス窓の向こうに煌びやかな東京の夜景が広がっていた。
「すっ、すごい……」
 レオもオディーヌも目を真ん丸くして見入った。