オディーヌは初めて見る東京の風景に驚きを隠せずにいた。
「ここは日本、貧困のない国だよ」
 シアンはうれしそうに言った。

 ガガガガガガガー!
 鉄橋の上を山手線が走り、続いて逆方向から成田エクスプレスが高速で通過していく。
「うわぁ!」
 レオは目を真ん丸にして後ずさりする。
「人がたくさん乗ってるわ……」
 オディーヌはビックリして言う。
 すると、巨大なトラックが重低音を効かせた音楽を大音量で流しながら交差点を曲がっていく。
「何なの? ここは……」
 二人は身を寄せ合って辺りをキョロキョロした。
「お、君可愛いね、ちょっとお茶でも飲もうよ」
 ちゃらいカッコした若い男がオディーヌに声をかけてくる。
「ナンパは間に合っとる!」
 レヴィアは男をにらみつけて言った。
「何? きみも可愛いけどちょっとまだ早いかな?」
「ぶ、無礼者が!」
 レヴィアが手を上げると、シアンがそれをつかんで止めた。
「お兄さん、そこまで。これ以上ちょっかい出すとお仕置きだぞ!」
 シアンはそう言って男をにらみつけた。
「おぉ、君も可愛いねぇ。どんなお仕置き? 二人でゆっくり……」
 男は懲りずにシアンを口説きだす。
 シアンは何も言わず、素早く男の額にデコピンをかました。
「ぐわっ!」
 男は吹き飛ばされて道路わきの植栽に埋まる。
 そして、口から泡を吹いてガタガタと震えだした。
「はい、移動するよ!」
 シアンはそう言ってレオとオディーヌの手を取って、センター街の方へと進んで行った。












2-8. 電子決済

「あの人はどうなったの?」
「ちょっとお仕置きしただけ。しばらくしたら正気に戻ると思うよ。もう二度と声かけようと思わなくなってるだろうけど。きゃははは!」
 そう言ってうれしそうに笑った。
 オディーヌはすれ違う人のファッションを興味深そうに観察しながら、シアンの後をついて行く。太ももののぞく短いスカートに厚底の靴だったり、極彩色のパーカだったり、オディーヌの目はキョロキョロとせわしなく動く。一人一人素材も色も形もみんな違う服をまとっていて、綺麗だったり、カッコよかったり、難解だったり、服装を見ているだけでオディーヌは圧倒されていたのだ。

「これ食べよう!」