レオは小声でオディーヌに聞く。あんな強いお酒をジョッキで飲む人など初めて見たのだ。
「違うと思うんだけど……、二人のやる事を常識で考えちゃダメよ」
 オディーヌは嬉しそうに二人を見つめながら言った。

「プハ――――! 美味いっ! 最高じゃ!」
 レヴィアは恍惚とした表情で言った。
「こっちの方が美味しい!」
 シアンも嬉しそうに言う。
「やはり王宮の酒は違うのう!」
 レヴィアはオディーヌを見てうれしそうに言った。
「お世話になるので、このくらいはやらせていただきます」
 オディーヌは丁寧に答えた。そして、続ける。
「それでですね、一つお願いが……」
「ん? なんじゃ? 何でも聞いてやるぞ」
 レヴィアは上機嫌に言う。
「さっき、『貧困のない国がある』っておっしゃってたじゃないですか」
「あぁ、まぁ、完ぺきではないがな」
「そこに視察に行きたいんです!」
 オディーヌは身を乗り出して言った。
「へ!? 行きたいのか?」
「目標を明確にするうえですごい参考になると思うんです」
「いや、それは……管理局(セントラル)が……」
 と、レヴィアが難色を示していると、シアンが言った。
「いいよ! 今すぐ行こう!」
「えっ! シアン様、そ、そんなの管理局(セントラル)の許可が下りませんよ!」
「レヴィア、管理局(セントラル)と僕、どっちが強い?」
 シアンはニヤッと笑って言う。
「そ、それはシアン様ですよ。シアン様に勝てる者などこの宇宙にはいないのですから……」
「ならいいじゃない、行くよ!」
「えっ、報告書誰が書くと思ってるんですかぁ?」
 レヴィアは泣きそうになって言った。
「王宮のウイスキー飲んだろ? 美味しかったろ?」
「いや、それとこれとは……」
「さぁ! レッツゴー!」
 シアンはそう言ってうれしそうにジョッキを高く掲げた。

 次の瞬間、四人は夜の渋谷のスクランブル交差点に居た。四方八方から押し寄せる群衆、そして目の前に展開される煌びやかな巨大動画スクリーン。レオもオディーヌも何が起こったのか全く分からず、雑踏の中呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした。
 やがて信号が赤になって人がはけていき……、車がパッパー!とクラクションを鳴らした。
「危ないよ、早くこっち!」
 シアンが二人を引っ張って歩道に上げる。
「な、何ですかこれ!?」