レオが眉間(みけん)にしわを寄せながら言った。
「助けると面倒な事になるよ? 割に合わないよ」
 シアンは肩をすくめていう。
 するとレオは真剣なまなざしで言った。
「シアン、それは違うよ。人生は損得勘定しちゃダメなんだ」
「へっ?」
「『いい損をしな』ってママが言ってたよ」
「いい損……?」
(いき)な損が最高だって。人生の本質は『損』にあるって」
 レオはそう言ってジッとシアンを見つめた。
「へぇ……、確かにそうかも……。君はすごい事言うねっ!」
 シアンはすごく嬉しそうに言った。
「へへっ、ママの受け売りだけどね」
 レオは照れ、そして目をつぶってちょっとうつむいた。
「で、損するのはいいんだけど……。僕、手加減できないからあいつら死んじゃうよ?」
 シアンは物騒なことを言う。
「なるべく殺さないように収められる?」
 レオはシアンに聞いた。
「うーん、殺さないようにかぁ……。君は面倒な事を言うねぇ」
 シアンはちょっと考え込む。

 と、その時、馬車の後ろの小さな非常口がパカッと開いて少女が出てきた。少女は美しい金髪を綺麗に編み込み、白く美しい肌が陽の光にまぶしく見える。そして、ピンク色のワンピースで胸の所に編み紐が付いている豪奢な服を着ていた。

「あっ! 王女様だ!」
 レオは叫んだ。レオはパレードの時に、遠巻きに彼女を見たことがあったのだ。
 美しく品のある王女は街のみんなのアイドルであり、話題の美少女である。もちろん、レオも大好きだった。レオはそんな王女の危機に思わず心臓がキュッとなって真っ青な顔になった。

 王女は必死にこっちの方に逃げてくる。
 しかし、黒装束の男たちも見逃さなかった。
「逃げたぞー!」
 という声がして、三人が追いかけてきた。














1-3. おぞましい漆黒の球

「シアン。助けよう!」
 レオはシアンの手を取って頼む。
「分かった。でもレオもちゃんと損してよ!」
「え? わ、分かった。何をすれば?」
 シアンはニコッと笑うと、レオに両手をかざし、何かをぶつぶつとつぶやく。すると、レオの身体がぼうっと光った。
「これでよし。これで、レオの身体は物理攻撃無効。どんな攻撃受けても無傷だよっ!」
「物理攻撃無効?」
 レオが首をひねっていると、シアンはレオのわきの下を持って、身体をひょいと持ち上げ、