茜色から群青(ぐんじょう)色にグラデーションを描く空には宵の明星が明るく光り、静かな夜の訪れを彩っていた。
 オディーヌは瞳に夕焼け空を映しながら言った。
「ねぇ、国づくりが失敗したらこの星が消されるって本当……なの?」
「うん、勝手に決めちゃってごめんね」
「それって、私もみんなも全員死んじゃう……ってことだよね?」
「そうなると思う」
「責任重大だわね……」
 オディーヌは天を仰いで大きく息を吐く。
「ゴメンね。でも、逆にだからこそうまくいくと思っているんだ」
「え?」
「だって、この星の人全員が協力せざるを得なくなったんだよ?」
 レオはそう言ってニヤッと笑う。
「そ、そうなるわ……ね」
「レヴィア様も本気にならざるを得なくなったもん」
「確かに……」
「そして、『貧困のない世界』にして困る人なんて誰もいないはずだよね?」
「お金持ちは困るかも?」
「それは困ってもらっていいんじゃない?」
 レオはニコニコしながら言った。
 オディーヌはちょっと複雑な表情をしながら、
「王族としてはそこはあまり肯定したくないけど……、でも、父も、貴族のみんなもあまり幸せそうじゃないのよね……。あんなに財宝持ってるのに」
「え? あんなに毎日ぜいたくしてるのに?」
「ぜいたくなんてすぐに慣れちゃうのよ。しきたりにマナーに権力争い……、みんなウンザリしているわ」
「もっと格差をなくした方がいい、ってことじゃないかな?」
「本当はそうだわ。でも、一度得たものを失う恐怖は強烈なの。貴族は私たちの挑戦を全力で反対するでしょうね……」
「でも、失敗したら滅ぼされちゃうから、協力せざるを得ないんじゃないかな?」
「んー、総論としてはそうなんだけどね、ずるがしこいのよ? 奴らは」
「うーん、その辺は外務大臣にお願い……させて」
「ふぅ、まぁ、仕方ない……わよね……」
「僕はね、お金も権力も要らないんだ。ただ、みんなに笑顔でいて欲しいだけなんだ」
 レオはまっすぐな瞳でオディーヌを見た。
「みんなが笑顔……。確かにそうね。レオが言うことは正しいわ。後はそれをどう実現するか……ね」
「多分、世界には頭いい人いっぱいいるんだから、そういう人たちの知恵を集めたら何とかなるよ」
 レオはそう言って屈託のない顔で笑った。
「……、そうね」
 オディーヌは静かにそう答えた。