「どしたの? 何が雑?」
「ひぃっ!」
 いつの間にか後ろにシアンが居て、ビビるレヴィア。
「何かあった?」
「あ、いや、死者が生き返ってしまってまして……」
「え? 生き返らしちゃマズかったんだっけ?」
「事件の前に死んでた者はそのままにしておかないと……」
「そうなの? レヴィアは細かいなぁ! きゃははは!」
 シアンはレヴィアの背中をパンパン叩きながら屈託のない顔で笑った。
「こ、細かい……、ですか……」
 レヴィアはぐっとこらえて渋い顔をした。

     ◇

 レオとオディーヌはレストランの後かたずけをしていた。窓ガラスは全部バリバリに割れ、椅子やテーブルは割れたり転がったりしてメチャクチャだった。
 シアンは戻ってくると、
「ありゃりゃ」
 と、言いながら被害の様子を一通り把握する。そして、割れた窓ガラスを枠から取り除き、枠の上に白い小さな円盤をぽつぽつと置いて行った。レオは何をしているのかと不思議そうにシアンを目で追う……。
 一通り置き終わると、シアンは目を閉じて何かを唱えた。すると、白い円盤はオレンジ色に鈍く光りながら薄く大きく広がってあっという間に窓枠を覆い、後には綺麗な窓ガラスが残った。メチャクチャに壊れたお店も窓ガラスが直ったら、ずいぶんマトモに見えるようになった。
 シアンはそれを見ると満足そうにうなずいて、おかみさんに、
「窓、直しておいたよ~」
 と、声をかけた。割れた窓ガラスの破片をホウキで集めていたおかみさんは、
「へっ!? あれ? 本当だ……」
 と、唖然(あぜん)とする。
「それで、エールをね、樽で何個か欲しいんだけど。いくつもらえる?」
 シアンはニコニコしながら聞いた。
「え? えーと、二つなら……」
「じゃあ、お会計ね」
 シアンはそう言って金貨を十枚おかみさんに渡した。
「へっ!? こんなにたくさん要らないよ!」
 驚くおかみさん。
「余った分は近所の人におごってあげて」
 そう言ってシアンは奥から樽を二つヒョイと持ち上げると、
「また来るね~」
 と言って、外へと出て行く。
「あ、ありがとねー!」
 おかみさんは戸惑いながら声をかけた。












2-5. 静謐な神殿

 レオは樽を持って出てきたシアンを見ると、
「えっ? まだ飲むの?」
 と、あきれたように言った。
「二次会だよ二次会!」