オディーヌは青い顔をして言った。
「そうか……。でも、やめないよ……」
 レオはキュッと歯を食いしばり、通りの混乱をジッと見つめた。











2-4. レストインピース

 レヴィアは通りに倒れている人たちを、手当たり次第に次々と治癒魔法で治していく。
「はい、お主はもう大丈夫じゃ!」
「すみません! うちの人もお願いします!」
 血だらけの婦人がレヴィアに頼み込む。
「いや、まず、お主からじゃろ」
 そう言ってレヴィアは青白い顔をした夫人に手のひらを向け、何かをつぶやいた。すると、夫人は淡い光に包まれる。
「あ、あぁ……」
 恍惚(こうこつ)となる婦人……。やがて夫人の顔には色が戻ってくる。
「はい、で、旦那さんはどこ?」
「こ、こっちです!」
 すると、シアンがツーっと降りてきて、
「僕に任せて!」
 そう言うと、両手を天にあげて街の上空に巨大な緑の魔法陣を描いた。
「へ?」
 レヴィアは唖然(あぜん)として空を見つめた。
 直後、優しい金色の光が街中に降り注ぎ……辺り一帯の人たちはみんな光をまとい、輝きだした。
「な、なんだこりゃ!?」「うわぁぁ……」
 ざわめく人々。
 道端で倒れている人も光をまとい、やがてむっくりと起き上がり始める。
 やがて、光はおさまり、魔法陣も薄くなって消えていった。
「これでよし!」
 シアンはニッコリと笑った。
「もしかして……全員治したんですか?」
「そうだよ?」
 さも当たり前であるかのようにそう言うと、上機嫌でレオ達の方へ戻っていく。
 レヴィアは、楽しそうに歩くシアンの後姿を見ながら圧倒され、軽く首を振った。

「キャ――――!」
 教会の方から叫び声が響いた。
 レヴィアは不審に思って声の方へ行くと、シスターが血相を変えて飛び出してくる。
「ど、どうしたんじゃ?」
 レヴィアが聞くと、
「死者が動き出したんです! ゾンビです、ゾンビ!」
 と、叫びながら逃げて行った。
 レヴィアが建物の中をのぞくと、棺の中の男がむっくりと起き上がって周りを見回している。
 レヴィアは、
「アチャー……」
 と、言って
「レストインピース!」
 と、唱え、動き出した死者を光に包む。
 やがて死者は、満足そうな微笑みを浮かべながらまた棺へと横たわった。
「ふぅ、シアン様の力はものすごいんじゃが……、雑で困るわい」