おかみさんはそう言って笑顔を見せた。

      ◇

 ほどなくして飲み物が出てきたが、レヴィアにだけ酒樽(さかだる)がどんと置かれた。
「ちょっと何? それ?」
 シアンが真顔で突っ込む。
「あ、我はいつもこれなんです……」
 レヴィアは小さくなりながら言う。
「これから大事な話するの! その樽は僕によこしなさい!」
 シアンはそう言って酒樽を奪ってパーン! と上のフタを割った。
「それでは、素晴らしい出会いにカンパーイ!」
 シアンはそう言うと、うれしそうに酒樽をゴツゴツとみんなの木製のジョッキにぶつけた。
 そして、酒樽を持ち上げると、傾けながらゴクゴクとエールを飲み始める。
 みんながじーっと見つめる中、どんどんと樽を傾けていき……、あっという間に全部飲み干してしまった。
「クーッ! 美味い!」
 目をぎゅっとつぶりながら言い放つシアン。そして、
「おかみさーん! 樽をおかわりー!」
 と、叫んだ。

 みんなはお互いの顔を見合わせて、困惑の表情を浮かべる。
「あのぉ、大事な話というのは?」
 レヴィアが恐る恐る聞く。
「え? 何だっけ? レオ、ちょっと説明して!」
 すっかり赤ら顔になったシアンは、うれしそうにレオに振った。








2-2. 欲望の生き物

 レオはいきなり振られ、せき込んだが、丁寧に話し始めた。
「えーとですね、僕たちで新しい国を作ろうと思うんです」
「さっきの何とか大臣とかの話か?」
 レヴィアは眉間にしわを寄せて聞く。
「そうです、そうです。奴隷や貧困のない自由な国をですね、作りたいんです。それで、どこに作ったらいいかレヴィア様にお伺いしたいんです」
「自由な国? そりゃまた難易度の高い話じゃのう……。お主、その難しさを分かっとるか?」
「僕には分かりません。だから、分かる人に教えてもらいたいんです。レヴィア様、ぜひ、教えてください!」
 レオはそう言ってまっすぐにレヴィアを見た。
 レヴィアはどう答えていいかちょっと悩む。するとシアンが、
「国づくりに失敗したら、この星消す契約になってるんだ」
 と、嬉しそうに言った。
「えっ!? ちょっ!? マジですか!?」
 レヴィアはびっくりして立ち上がる。
「マジもマジ、大マジよ! ね、レオ?」
 そう言って赤い顔でにこやかにレオを見るシアン。