「えっ!? そんなことできるの?」
「レオが望むなら軍隊を無力化してあげるよ」
 シアンはニコニコしながら言った。
「それって……、軍隊相手に勝つってこと……だよね?」
「ふふっ、僕は星ですら消せるんだよ? 軍隊なんて瞬殺だよ!」
 そう言ってシアンはドヤ顔で胸を張った。
「すごいなぁ……。シアンは神様なの?」
 さっきの不思議な世界といい、シアンの存在は人の領域を超えている。
「僕はそんなに神聖じゃないよ。でも、神様よりは強いかな?」
 自慢顔のシアン。
「神様より強いならもう神様じゃないの?」
「そうかなぁ? シアンはシアンだよ」
 そう言ってシアンはニコニコする。
「それにしても国を乗っ取る……かぁ……。それって楽しいかなぁ?」
 首をひねるレオ。
「うーん……、軍隊倒すのは楽しいけどねぇ……」
「僕は楽しく国づくりがしたいんだよ」
 レオはそう言ってニッコリした。
「ふぅん。なんだか君はずいぶんとマトモだね……」
 シアンは首をかしげた。

 奴隷でこき使われ続けてきたレオにとって、神様より強いというシアンの存在は全く想像を絶していた。でも、自由の国を作るというただの思い付きが、シアンの圧倒的な力によって現実性を帯びてきてることにレオはワクワクが止まらず、思わず両手のこぶしをグッと握った。

      ◇

 パカラッ! パカラッ!
 馬が走ってくる音が響いてきた。

「あ、馬車だ! 危ないよ」
 レオはシアンの手を引いて道の脇に避けた。

 豪奢な金属製の鎧を身にまとった騎士が乗った騎馬が四頭、それに続いて馬車がやってくる。豪華な装飾のつけられた馬車には王家の家紋があしらわれ、どうやら王族が乗っているらしい。

 俺たちは馬車を見送り、舞い上がった砂ぼこりを手で払った。

 ヒヒヒーン! ヒヒーン!
 向こうで急に馬たちがいななく。

 何だろうと思ってみると、黒装束の集団がいきなり騎馬の前に飛び出し、交戦を始めた。馬車も急停車すると、黒装束の連中に囲まれ、ドアを壊されていく。

「うわっ! 大変だ! 襲われてるよ!」
 レオは叫んだ。
「ありゃりゃ」
 シアンは淡々と言う。

 騎士たちは健闘したが、多勢に無勢。やがて次々と引きずり降ろされ、倒された。このままだと馬車の中の王族もやられてしまうだろう。

「何とか助けてあげられないかな?」