「え? いいの? ありがとう!」
 シアンはうれしそうに答えた。

        ◇

 レオ達は別の応接室に案内され王様とのお茶会となった。

「君たちはドラゴンの所へ行くんだって?」
 王様が聞いてくる。
「はい、シアンが案内してくれるんです」
 レオが答える。
「ドラゴンはなかなか我々の前には姿を現してくれない。なぜ、君たちは会えるのかな?」
 王様は鋭い視線を投げかけてくる。
 シアンは、ケーキを美味しそうに食べながら言う。
「ドラゴンは僕の友達なんだ」
「友達……。君は何者なのかね?」
「僕はシアンだよ! きゃははは!」
 うれしそうに笑うシアン。
「お友達なら、呼んだら来てもらうこともできるかね?」
「いいよ! 今、呼ぼうか?」
 シアンはケーキを頬張りながら言った。
「えっ? それはぜひ!」
 王様は興奮ぎみに言う。
「でも……。この部屋に呼んだら建物壊れちゃうね……」
 そう言ってシアンは部屋を見回した。
「中庭ならどうかな?」
 王様は窓の外を指さした。
「うんうん、じゃあ、呼んでみよう!」
 シアンはそう言って立ち上がって、フォークを掲げた。

       ◇

 中庭へ移動すると、そこには赤白ピンクのバラが咲き乱れた庭園があり、真ん中には東屋(あずまや)が建っていた。すでに陽は傾き始め、長い影が伸びている。
 シアンは目をつぶって何かをぶつぶつとつぶやき、両手を顔の高さでフニフニと動かす。そして、
「レヴィア! カモーン!」
 と、叫んだ。

 すると、ボン! と、爆発が起こり中庭を煙が覆う。やがて煙が晴れていくと、上空に巨大な黒い影が現れた。
 それは厳ついウロコに覆われた巨大な恐竜のような生き物で、背中には大きな羽が生え、手には巨大な鋭い爪が光っている。
 ドラゴンは辺りを見回すと、
「誰じゃいきなり! 失礼極まりないわ――――!」
 と、叫ぶと、口から真紅の豪炎を噴き出した。
「うわぁ!」「キャ――――!」
 悲鳴が上がり、美しかったバラ園はあっという間に炎に包まれる。
「た、たすけて――――!」「逃げろぉ!」
 王宮は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
 ドラゴンは怒り狂い、グギャァァァァ! と、身体の底に響く激しい重低音で咆哮(ほうこう)を放った。
 バラ園は焼け野原となり、東屋も焼け落ちていく。
()れものが――――!」