「ゴメンね。だからオディーヌにも協力して欲しいんだ。そしたら成功できる気がするんだ」
 レオはゆっくりと丁寧に言った。
 オディーヌは大きく息をつき……、そして、いきなり両手でテーブルをバン! と叩いた。
 そして、レオをキッとにらんで言った。
「いいわ! 今日、シアンには助けられたし、貧困を放置してたのは確かに王族の問題だわ。やるわよ。何やったらいいの?」
「ありがとう!」
 レオはもう一度右手を出し、オディーヌは一瞬苦笑して、そして、レオの目をしっかりと見ながらガッシリとその手を握った。
 シアンはケーキを口いっぱいにほお張って、モグモグとさせながら二人の握手をうれしそうに見ていた。











1-14. 騎士こん棒

「オディーヌは何が得意?」
「そうね……。国際情勢や外交の情報持ってるし、本もたくさん読んできたわよ」
「それは頼もしいなぁ。お金の仕組みも分かる?」
「経済学ね、ちゃんと勉強したわよ! 銀行に証券に信用創造……」
「うわぁ、それはすごいね。シアン、どうかな?」
 ケーキをパクついていたシアンは、
「うん、外交と財務担当かな? 王様にはどう説明する?」
 そう言ってオディーヌを見る。
「うーん、こういうのはどうかしら? ドラゴンの領地に我が国ニーザリを代表して研修に行くって形にするの」
「なるほど、研修ね。いいかも」
「じゃあ、財務大臣と外務大臣はオディーヌね。よろしく!」
 レオはうれしそうに言った。

         ◇

 ドタドタドタと、廊下の方から足音が響いてきた。
 レオとオディーヌは顔を見合わせて不安な表情を浮かべる。

 バーンとドアが開き、王子が戻ってきた。今度は騎士団一行を連れてやってきたのだ。

「王族を侮辱する魔女め! ニーザリ最高の剣士を連れて来た。成敗してやる!」
 ドヤ顔の王子。
 シアンはそんな言葉を無視し、ひたすらケーキを楽しんでいる。
 王子は、隣の鎧を着こんだアラフォーの剣士とアイコンタクトを取ると、剣士が前に出てきた。
「お嬢さん、お手合わせをお願いします……」
 シアンはチラッと剣士の方を見て、
「ふぅん、勝負するんだ?」
 そう言うと、立ち上がり、フォークで刺したケーキをパクッと食べ、ニヤッと笑って見せた。そして、フォークを指先でクルクルっと回し、
「どこからでもどうぞ」