「だってこの国だって奴隷たちが支えてるでしょ? だったら奴隷たちだけで国作ったら今より良く回るよね?」
「……」
 オディーヌは圧倒され、言葉を失った。『支配階級は搾取しかしてない』という批判ともとれる言葉に返す言葉が無かったのだ。
「シアン、そうだよね?」
「コンセプトはその通りだし、インフラは僕が作ってあげる。後はルールを決め、オペレーションを具体化する仲間集めだよね」
 シアンはケーキをつつきながら言った。
「オディーヌも一緒にやらない?」
 レオはニコッと笑って聞いた。
「えっ!? わ、私!?」
 焦るオディーヌ。
 それを見てシアンは笑った。
「レオ、君はすごいな。王族をヘッドハントしようなんて普通思いつかないよ」
「だって、なんだかオディーヌは窮屈そうなんだもん。楽しいこと一緒にやろうよ」
 レオは澄んだ瞳で淡々と口説く。
「そ、そうね……。確かに王族の暮らしは窮屈よ。しきたりに儀式、それからマナー、マナー、マナー。そして私の王位継承順位なんて下の方だし、どうせ政略結婚させられるんだわ……」
 オディーヌは苦々しい顔をしてうつむいた。
「なら、一緒に行こうよ」
 レオはそう言って右手を差し出した。
「……」
 オディーヌはその手をジッと見つめる。
 そして、目をつぶり、大きく息をつく……。
「後ろ盾は……、シアンとドラゴン……ってことよね?」
「そう、世界最強だよ」
「軍事はOKってことよね? 経済は?」
 オディーヌが聞くと、シアンは手をフニフニを動かした。
 ドシャー! と大量の金貨がテーブルの上に落ちてきて、シアンはドヤ顔でオディーヌを見る。
 オディーヌは言葉を失い、ただ、金貨の山を見つめていた。
「それに……、申し訳ないんだけど、もうオディーヌも関係者なんだ」
 レオはオズオズと切り出した。
「え?」
「この国づくりが失敗すると、この国もこの星も消えちゃうんだ」
「へっ!?」
 唖然とするオディーヌ。
「ゴメンね。でも、奴隷や貧困を放置していたのはみんなの責任だから、みんなの問題かなって思うんだ」
「消えちゃうって、誰が消すの?」
 レオは申し訳なさそうに、ケーキをパクついているシアンを指さす。
 オディーヌは大きく目を見開いてシアンを見て……、そして、ガックリとうなだれた。