シアンはハッとしてレオを見る。
「取りに戻ろう!」
 立ち止まってレオが言う。
「んー、まぁ、屋根ぶっ壊しちゃったしレオをここまで育ててくれたんだから、置き土産でいいよ」
 シアンはそう言ってニッコリと笑った。
「え? 千枚だよ、千枚。家が一軒買えちゃうよ?」
「ふふっ、悪いことできなくなったから、更生資金にも使ってもらえばいいんじゃないかな?」
「シアンは太っ腹だなぁ……」
「そもそもお金なんて大したものじゃないんだよ」
 シアンは軽く言う。
「僕には大したものだけどね……」
 レオはそう言って首を振った。
「国を作るんだから、レオはお金を作る立場になるんだよ。もっと視野を広げなきゃ」
「えっ!? そ、そう言えば……。お金ってどうやって作るんだろう」
 レオは考え込んでしまった。
「こうやって作るのさ」
 そう言うとシアンは空中からジャラジャラと金貨を出して、一つをレオに渡した。見ると、金貨の表面にはレオの横顔がち密に彫ってあった。
「な、何これ!?」
 ビックリするレオ。
「お金とはただの信用だよ。みんながお金だと思えばなんだっていいんだよ」
「うーん、難しいなぁ……」
「レオは分かんなくていいよ。分かる人を見つけようよ」
 シアンはそう言って優しく微笑んだ。
「財務大臣……候補だね」
「そうそう、レオは信頼できそうな人を口説くだけでいいよ」
「うーん、できるかなぁ……。まぁ、やるしかないんだよね……。頑張ってみるよ」
 レオはそう言って微笑んだ。

      ◇

 遠くに王宮が見えてきた。豪奢な装飾のついた鉄のフェンスが広大な屋敷を囲い、中には赤、白、ピンクのバラが咲き誇る美しい庭園が見える。
 レオがいきなり止まって言った。
「あっ、僕、こんな服で来ちゃった……」
「服なんて何でもいいんじゃない?」
 シアンは別に興味無いようだった。
「いやいや、王宮にこんな奴隷の服じゃ入れないよ、困ったなぁ……」
「じゃあ、こうしよう」
 シアンは両手をレオの方に向けて何かブツブツつぶやいた。

 ボン!

 爆発音がして、レオの服が濃紺のジャケットにボーダーのトップスになった。
「えっ!? あ、ありがとう……、でも不思議な服だね……」
 レオは初めて見るタイプの服に戸惑う。
「ユニクロで見繕ってみたよ」
「ユニクロ……?」
「僕が生まれた星の服屋さんだよ」