シアンは紅蓮の瞳で射抜くようにジュルダンをにらんだ。
「ひぃぃぃ!」
 ガタガタと震えるジュルダン。
 そして、シアンは胸の所から何か黄色い物を出す。
 それはプラスチックでできた可愛らしいアヒルのオモチャだった。
 シアンはアヒルの赤いくちばしにチュッとキスをすると、それをジュルダンの方へ差し出す。
 ジュルダンは何だかわからず、呆然とアヒルを見た。
 直後シアンはギュッとアヒルを潰す。

「ホゲェェェェ!」
 赤いくちばしから奇声を上げるアヒル。
 すると、ジュルダンは淡い光に包まれた。
「な、なんだこれは!? う、うわぁぁぁぁ!」
 ジュルダンがビビった直後、ジュルダンはあっという間に縮んでアヒルに吸い込まれていった。
「悪い子はおしおき! きゃははは!」
 シアンの笑い声が不気味に部屋に響く。
 やがてオーラは消え去り、滅茶苦茶になった部屋の中で、アヒルが動いた……。

「な、なにをするんだ!」
 アヒルがカタカタ揺れながら、可愛い甲高い声で叫ぶ。
「アヒルにしちゃいけないルールもないよね?」
 シアンはうれしそうに言った。
「くっ……! わ、悪かった。許してくれ。レオの奴隷契約も差し出すよ」
 アヒルはピョコピョコと揺れながら言った。
「これ、どう思う?」
 シアンはウォルターにアヒルを渡して言った。
「お、おい、何するんだ!?」
 アヒルが可愛い声で叫ぶ。
 ウォルターはアヒルをしげしげと眺め、
「これ、どうなってるんですか?」
 と、言いながら、ギュッと握りつぶした。
「ホゲェェェェ!」
 アヒルが奇声を上げる。
「あ、なんか、この声クセになりますね!」
「やめろ! ウォルター! 貴様!」
 アヒルが可愛い声を上げる。
 ウォルターはうれしそうに再度握りつぶした。
「ホゲェェェェ!」
 あまりにも滑稽な奇声に、みんな思わず笑ってしまう。
「はっはっは!」「わははは!」「きゃははは!」
「お、お前ら……ホゲェェェェ!」

 しばらくみんなでオモチャにした後、
「さーて、じゃあ、奴隷契約書はもらってくよ」
 そう言って、シアンは金庫を力ずくでバキバキっと壊して開け、契約書の束をパラパラとめくった。
「おい、何するんだ! 人間には戻してくれるんだろうな?」
 アヒルがウォルターの手の中で、ピョコピョコしながら喚く。