ス――――、フゥ――――。

 ス――――、フゥ――――。

 何度か繰り返すものの雑念が邪魔をして一向に瞑想状態まで行けないレオ。
「ダメです、どうやるんですか?」
 レオは泣きそうになって零に聞いた。
「焦らなくていいんです。雑念が湧いてもいいんです。雑念が湧いたら『これは横に置いておこう』って思ってまた深呼吸するといいんです」
 零は以前読んだ瞑想のやり方を伝える。
「分かったよ!」
 レオは再度深呼吸を始めた。

 ス――――、フゥ――――。
 ヴィクトーの顔がチラついたが、それを横に流し、
 ス――――、フゥ――――、と深呼吸を続けた。

 やがてフワッと体が浮き、スーッと落ち込んでいく感覚がした。
 レオはそのまま深呼吸を続ける……。
 どんどん、どんどん、落ちて行く……。
 それは今までにレオが感じたことのない感覚だった。
 レオは恍惚とした表情でさらに深い所を目指す……。












4-6. 魂の故郷

 やがて、何かが見えてきた。
 それは中央が塔になった巨大な花だった。
 花は薄暗い巨大な洞窟の中に咲いており、中央の塔がめしべのような位置で、明るい光の球を内包していた。花びらはキラキラと鮮やかな色で無数のきらめきを放ち、甘い香りを漂わせている。
「うわぁ……」
 レオはその幻想的な風景にしばし見とれていた。そして、しばらく見ているうちにそれが何だか分かってしまった。それは魂の故郷だった。花びらのきらめき一つ一つがそれぞれ魂の喜怒哀楽を表しているようだった。
 生きとし生けるものの魂はここで管理され、喜怒哀楽の輝きを放ちながら他の魂と共鳴するのだ。
「綺麗……」
 レオはその煌めきを見ながら自然と涙をこぼしていた。命はかくも美しく、幻想的な輝きだったのか。そして、自分たちの勝手な都合でこの輝きを消しちゃいけないと改めて誓った。
 レオは思念体となってふわふわと花の周りを飛んだ。蛍のような光の微粒子がゆったりと飛びまわる中をクルリと一周してみる。まるで光のじゅうたんのような花はどこから見ても気品高く、心に迫る美しさにゾクッと痺れた。
「で、どうするんだろう?」
 レオは短剣をどう使ったらいいのか悩んでいた。すると、思念体の手に短剣がぼうっと浮かび上がった。
 柄のところの赤い宝石がキラキラと輝き、刀身は青く蛍光していた。