零が歓迎会の時のことを思い出して言った。
「そうね、情報でできてるって……」
 オディーヌも思い出して言った。
「シアンは『知れば操作できる』と言ってた……」
「この世界を知る……、一体どうやって?」
 零が聞く。
「呼吸がカギだって言ってたわ」
「呼吸!? 知る事と呼吸と何の関係が?」
「分からないわ、でも肺が唯一動かせる内臓だって……」
「なるほど……、瞑想……かもしれないな」
「瞑想?」
 レオが聞く。
「心を落ち着かせると無意識の中が見えてくるんだよ。そこがカギになってるのかもしれない」
「じゃあ、やってみよう!」
 三人は零の瞑想のやり方の記憶を頼りに椅子に浅く座り、背筋をビンと伸ばしてゆっくり深呼吸を繰り返した……。

「なんかボーっとしてくるけど、世界のことは分からないね……」
 レオが言う。
 するとオディーヌが変な口調で話し始めた。
「なんじゃお前ら、捕まったのか、しょうがないのう……」
「レ、レヴィア!? レヴィアなの?」
 レオが驚いて聞く。
「いかにも我じゃ。じゃが……、議会の総意が正義である以上、我も介入はできんぞ」
「そ、そんなぁ……、多くの人が死んじゃうよぉ!」
「それが人々の総意なら止められんのじゃ」
「レヴィアひどい!」
「ひどいって言われてものう……」
「瞑想するのは正解ですか?」
 零が横から聞く。
「いかにも正解じゃ……。ついでに一つだけヒントをやろう。レオの短剣、それがカギになっとる。上手く使えよ」
「えっ? 短剣!?」
 レオは腰のベルトに付けておいた短剣を取り出して眺めた。しかし、それはただの剣だ。瞑想でどう使うのか分からない。
「ねぇ、どうやって使うの?」
「瞑想を極めたら自然と分かるよ。これ以上は言えん。健闘を祈っとるよ」
 そう言うとオディーヌはぐったりと倒れた。
「これがカギ……」
 父の形見だとママに渡された短剣。まさかそれがこの世界のカギだったとは……。思いもかけなかったことにレオはしばし呆然として短剣を眺めていた。
 零は、気を失ったオディーヌを丁寧に横たえると、言った。
「レオさん、カギを使いましょう!」
「う、うん……。瞑想してこれを使うとシアンみたいになれる……ってことだよね?」
「そうだと思います。ヴィクトーを止めましょう!」
 レオは短剣を握り締め、再度深呼吸を繰り返した。