そして、部屋をぐるりと見まわして、オディーヌや零を一瞥(いちべつ)するとレオに堂々と言う。
「国王陛下、何かありましたか?」
「なぜ軍拡などするのですか?」
 レオは単刀直入に聞いた。
「国王陛下の理想をすべての国に広げ、この世から貧困と奴隷を無くします!」
 ヴィクトーは悪びれることもなくそう言い放った。
「侵略戦争はダメだよ! 多くの人が死ぬよ!」
「今、この瞬間も奴隷が過労や暴力で殺されています。彼らを救う事こそが死者を最小限にします!」
「そんなのは詭弁(きべん)だよ。アレグリスを成功させ、模範となって他国を少しずつ変えていくという話だったじゃないか!」
「そんな方法では何十年もかかります。武力介入すれば一瞬です!」
 ヴィクトーはグッと力こぶしを握って言った。
「ダメダメ! 僕がみんなに声をかけてくる!」
 レオがそう言って部屋を出ようとした時だった。ヴィクトーはパチンと指を鳴らす。
 すると、武装した兵士が十人ほど部屋になだれ込んできた。
「キャ――――!」「うわぁ!」
 オディーヌや零はいきなりの展開に悲鳴をあげた。
 武装兵たちは銃口をレオたちに向け、執務室を一気に制圧したのだった。
「国王陛下、我々は国民代表です。国民が武力を望んでいるんです。国民主権、この国で一番偉いのは国民だってあなたが決めたんですよ?」
 そう言ってヴィクトーはニヤッと笑った。

 レオたちは両手を上げ、絶望の中拘束されたのだった。










4-5. 託されたカギ

 オフィスビルの地下室に三人は軟禁された。
「とんでもない事になっちゃった……」
 レオは頭を抱える。
「レヴィア様の警告を生かせなかった……。ヴィクトーたちはお父様たちを襲うつもりだわ、何とかしないと……」
 オディーヌは真っ青になって言った。
「何とかって……何か方法あるの?」
「シアンさんかレヴィアさんを呼べれば解決ですが……」
 零はそう言うものの、呼ぶ方法がない現実に肩を落とした。
 レオたちはスマホも取り上げられ、外界とは隔絶されてしまっているのだ。
「何か方法ないかなぁ……」
 レオが頭を抱えながら言う。
 三人は黙り込んだ。
 どこかの換気扇のグォーンという鈍い音がかすかに地下室に響いている……。

「あの……、この世界は幻想だって……言ってましたよね……」