その夜、国権移譲式典が開かれ、レオから首相であるヴィクトーにドラゴンをかたどった金のプレートが受け渡された。
「ヴィクトー、頼んだよ」
 レオはニッコリと笑いながら握手をした。
「国王陛下の理想は必ずやこの私が実現して見せます!」
 ヴィクトーは熱い情熱を瞳にたぎらせながら、ガッシリとレオの手を握る。
 オディーヌは拍手をしながら感慨深く二人を眺めていた。
 レオの掲げた理想の挑戦はついにレオの手を離れ、羽ばたいていく事になる。
 もう、レオには実権は無い。ただ、国の象徴として国民に愛される存在になったのだった。

「じゃあ、我もそろそろ行くとするかのう……」
「えっ!? レヴィア様も行っちゃうんですか?」
「もともとどこか一国に肩入れするのは禁忌なんじゃ。シアン様ももうおらんし、これ以上いたら管理局(セントラル)に怒られるわい」
「せめてレオに挨拶を……」
「湿っぽいのは苦手じゃ。達者でやれよ」
 レヴィアはそう言うと空間を切り裂いた。
「あ……。ヴィクトーは何やら企んどるぞ。注意しとけ」
 レヴィアは思い出したようにオディーヌに言った。
「え? ウソ発見器では宣誓にウソは見られませんでしたよ」
「逆じゃ、レオの理想に感化され過ぎとる。過ぎた正義は暴走するんじゃ。まぁ、収まるところに収まるしかないじゃろうが……」
「暴走って?」
「ふふっ、お主ならもう分かっておろう。では、また縁があれば会おう!」
 そう言うとレヴィアは、空間の裂け目をくぐって自分の神殿へと帰っていった。











4-4. 制圧

 その晩、レオは超高層ビルの執務室でぼんやりと夜景を眺めていた。眼下に広がる商業施設やスタジアムはライトアップされ、多くの人が行きかっている。そして工業地帯のプラントたちも元気に稼働しており、煙突の上からは炎が立ち上り揺れていた。
 達成感はあるものの、本音を言えばすごく寂しかった。ハチャメチャだけど常に元気をくれたシアン、彼女に翻弄されながらもいろいろ工夫して尽力してくれたレヴィア……。もう、彼らはいないのだ。そして、実権を失ったレオにはもう仕事もない。
 理想を突き詰めたら寂しくなってしまった。頭では理解していたものの、胸にポッカリと穴が開いたように何をする気も起らなかった。

「大人ならこういう時にお酒を飲むんだろうな……」