シアンは直径百メートルはあろうかと言うこの巨大な穴の周りをぐるっと回って飛んで様子を確認する。
 道は途切れてしまい、池からの水が滝のように穴へと流れ落ちていた。もはや災害である。

        ◇

 王女が池から上がってきて、道からシアンたちを見あげていた。
 シアンは彼女を見つけると、王女に手を振りながら徐々に高度を落としていく……。
 そして、王女の前にシュタッと着地すると、
「悪い奴はとっちめておいたよ!」
 そう言いながらレオを下ろした。
 王女はとまどいがちにシアンに頭を下げてお礼を言った。
「た、助けていただいてありがとうございました」
「無事でよかったね!」
 シアンはニコニコしながら言う。
 しかし、王女は穴の中を恐る恐るのぞき、どこまでも深く底の見えない暗黒の穴におののく。
「この穴は何とかならないでしょうか? 道が切れるのは困るんです……」
 王女は困惑した表情を見せる。

「分かったよ!」
 シアンはニコッと笑うとツーっと穴の上空へと飛んだ。
 そして両手を空へと伸ばすと、漆黒の雲が生まれ、シアンを中心にどんどんと空を覆っていった。

 レオは青くなった。またとんでもない事をやるに違いない。常識の通じないこの少女の行動は一体どうしたらいいのか? レオは混乱の中少し気が遠くなった。





1-6. 全員生き埋め!?

 レオは王女に、
「ヤバい、ヤバい、逃げよう!」
 そう言って、王女の手を握って駆けだした。シアンが何かをやろうとする時は逃げた方がいいと、レオは学習したのだ。

 やがて辺りは夜のように真っ暗になり、空に巨大な金色の円が描かれた。そして、中に六芒星(ぼうせい)が描かれると、その周囲に不思議な文字が高速にびっしりと描かれていき、魔法陣を形成していった。それは神々しさすら感じられる美しい光景だった。

 レオが振り返ると、魔法陣が出来上がり、そこからまっすぐ下に光芒(こうぼう)が放たれていった。
 シアンはその光芒の中で楽しそうに浮かんでいる。青い髪をゆらし、スカートがはためき、その様子はまるで神話に出てくる天使の様だった。
 徐々に光芒は強くなり、目が開けていられないくらいの激しい明るさに達した直後、シアンは両手を穴へと振り下ろす。

 ズズーン!

「うわぁぁぁ」「ひぃっ!」