「……た……ん」
真っ白な世界で、声が聞こえる。
「ゆ……た……ん」
何だか、凄く体が暖かい。
「優太くん……」
目を開けると、目の前には涙ぐむ来夏の姿があった。彼女は、僕を見て目を丸くさせている。
「ゆう……たくん?」
瞳を動かすと、部屋中にびっしりと謎の機械が並べられている。それらの機械からは沢山のケーブルが付いており、僕の方へと伸びていた。
「千代田さん! 優太くんが、優太くんが!!」
来夏は大粒の涙をボロボロこぼしながら叫んでいた。
「ら、いか」
声を出そうと思ったが、上手に声を出すことができなかった。来夏の涙を拭ってあげたくて、腕を伸ばそうとするも、体が言うことを聞いてくれない。
でも、それで気がついた。多分、奇跡が起きたんだ。
僕はなぜか、現実に戻って来ていた。仮想世界から、抜け出していた。僕は、目覚める事が出来たんだ。
「良かった。優太くん! 本当に、良かった!」
ガバッと、来夏が抱きついて来た。彼女の体は本当に暖かく、優しさで溢れていた。
☆★☆★☆★
あれから数ヶ月が経った。
「あ、ここだよ。ここここ」
僕達はその時、地元にある霊園にやって来ていた。
「これが、蓮田の墓か」
「こっちには凪沙さんのお墓もあるよ」
ここにやって来たのは、蓮田達の墓参りに来るためだ。
「僕、結局現実では蓮田と一度も会ってないんだよな」
この墓に眠っている男と僕は全く面識がない。全て僕が見ていた夢に過ぎないのだ。なのに、なぜこんなにも胸が締め付けられるのだろうか。
「そうだよね。優太くんが蓮田くんと友達になったのは、仮想世界での事だもんね」
あの日、僕の仮想世界が消滅した日、僕は死を覚悟していた。現実世界から僕を見ていた千代田も、あの場にいた来夏だって、僕の死を感じていた筈だ。でも、実際は僕は死ななかった。
それについて、少しだけ千代田が説明してくれた。
僕が日々感じていた謎の頭痛の正体は、僕の脳が回復しかけていたから発生していたものらしい。健常者が長時間仮想世界に入ると脳にダメージを負ってしまう。それと同じように、僕の脳が段々と機能を取り戻し、補強がダメージになっていた。
検査の時に回復していたのが分からなかったのは、脳が回復しているのは一時的だったから、だという。つまり僕の脳が頭痛を感じている間は、脳の機能が復活していたという事になる。
そして、あの仮想世界が壊れた日、僕の脳は完全に復活した。ということらしい。
千代田がそれについて気が付かなかったのは『エモーション』による症状にはまだまだ不明な点があるからだという。今回の僕の一件で、より医学が進んでくれることを願っている。
「ま、優太くんが生き返ってくれて何よりだよ」
来夏は笑いながら、僕の車椅子を押していく。
今のこの世界には、来夏の母親も彼氏もいる。僕の死を願っていた両親だって生きている。
この世界は仮想世界のように全てが思い通りの世界ではない。この世界には、理不尽が詰まっている。だけど、僕達には確かな未来がある。どうしようもないほどの、希望が詰まった未来がある。
「あ、サイダー買っちゃお」
来夏は自動販売機でサイダーを買った。プルタブを開けると、プシュッと音を立てて、炭酸が逃げ出していった。
「あー、やっぱりサイダーの音は涼しいよ」
「いや、飲んだ方が涼しいね」
こんな何気ない会話ができるだけで、心底幸せだと思った。
真っ白な世界で、声が聞こえる。
「ゆ……た……ん」
何だか、凄く体が暖かい。
「優太くん……」
目を開けると、目の前には涙ぐむ来夏の姿があった。彼女は、僕を見て目を丸くさせている。
「ゆう……たくん?」
瞳を動かすと、部屋中にびっしりと謎の機械が並べられている。それらの機械からは沢山のケーブルが付いており、僕の方へと伸びていた。
「千代田さん! 優太くんが、優太くんが!!」
来夏は大粒の涙をボロボロこぼしながら叫んでいた。
「ら、いか」
声を出そうと思ったが、上手に声を出すことができなかった。来夏の涙を拭ってあげたくて、腕を伸ばそうとするも、体が言うことを聞いてくれない。
でも、それで気がついた。多分、奇跡が起きたんだ。
僕はなぜか、現実に戻って来ていた。仮想世界から、抜け出していた。僕は、目覚める事が出来たんだ。
「良かった。優太くん! 本当に、良かった!」
ガバッと、来夏が抱きついて来た。彼女の体は本当に暖かく、優しさで溢れていた。
☆★☆★☆★
あれから数ヶ月が経った。
「あ、ここだよ。ここここ」
僕達はその時、地元にある霊園にやって来ていた。
「これが、蓮田の墓か」
「こっちには凪沙さんのお墓もあるよ」
ここにやって来たのは、蓮田達の墓参りに来るためだ。
「僕、結局現実では蓮田と一度も会ってないんだよな」
この墓に眠っている男と僕は全く面識がない。全て僕が見ていた夢に過ぎないのだ。なのに、なぜこんなにも胸が締め付けられるのだろうか。
「そうだよね。優太くんが蓮田くんと友達になったのは、仮想世界での事だもんね」
あの日、僕の仮想世界が消滅した日、僕は死を覚悟していた。現実世界から僕を見ていた千代田も、あの場にいた来夏だって、僕の死を感じていた筈だ。でも、実際は僕は死ななかった。
それについて、少しだけ千代田が説明してくれた。
僕が日々感じていた謎の頭痛の正体は、僕の脳が回復しかけていたから発生していたものらしい。健常者が長時間仮想世界に入ると脳にダメージを負ってしまう。それと同じように、僕の脳が段々と機能を取り戻し、補強がダメージになっていた。
検査の時に回復していたのが分からなかったのは、脳が回復しているのは一時的だったから、だという。つまり僕の脳が頭痛を感じている間は、脳の機能が復活していたという事になる。
そして、あの仮想世界が壊れた日、僕の脳は完全に復活した。ということらしい。
千代田がそれについて気が付かなかったのは『エモーション』による症状にはまだまだ不明な点があるからだという。今回の僕の一件で、より医学が進んでくれることを願っている。
「ま、優太くんが生き返ってくれて何よりだよ」
来夏は笑いながら、僕の車椅子を押していく。
今のこの世界には、来夏の母親も彼氏もいる。僕の死を願っていた両親だって生きている。
この世界は仮想世界のように全てが思い通りの世界ではない。この世界には、理不尽が詰まっている。だけど、僕達には確かな未来がある。どうしようもないほどの、希望が詰まった未来がある。
「あ、サイダー買っちゃお」
来夏は自動販売機でサイダーを買った。プルタブを開けると、プシュッと音を立てて、炭酸が逃げ出していった。
「あー、やっぱりサイダーの音は涼しいよ」
「いや、飲んだ方が涼しいね」
こんな何気ない会話ができるだけで、心底幸せだと思った。