───猛ぅ……。今なら撃てるよ?

 そっと、猛に近寄り耳打ちするナナミ。

「え?」
 チラリと見れば、ナナミが後ろ手にトカレフを隠している。

「(ま、待てって! 外したらどうするんだよ?)」
「(外さないよぉ? 例え外してもこの状況よりいいと思うけど?)」

 ナナミの目は本気だ。
 トカレフはセーフティがついていない。
 すなわち、あとは引き金を引くだけで弾が出る状態だ。

 妙な金属音を立てることもないので、エルメスに気付かれる恐れもないだろう───。

 でも、だからって!?

「おっと、妙な動きをするなよ───! ナナミといったな……その武器をすてろ!!」
「チ……」

 うわお、ナナミさん舌打ちしたよ。

 どうやら、エルメスはちゃっかりと武器のことを確認していたらしい。
 まぁ、そうでなければのこのこ出てこないだろうし、メイベルを盾に取ろうとは思わないはずだ。

「ナナミ!」
「はーい」

 猛はどうにもならないと判断して、オリハルコンの刀を地面に置く。
 ナナミも渋々従って、AK-47とRPG-7も地面に。

「後ろ手に隠している武器もだ!!」
「ありゃ。バレてた」

 テヘ。

 メンゴメンゴと笑いつつ、ナナミはトカレフと手榴弾を地面に置く。


 ……………………………って、手榴弾?!


「ナナ───!?」
「置いたよ? これでいいのかなぁ?」

 ナナミはニッコリ笑って、地面の手榴弾をコンと蹴り飛ばす。
 そこに安全ピンはなく、着火レバーが今にも……───。

 コンコンコンッ………………こー。カキンッ!

「ひぇ?!」

 手榴弾が固い金属音を立てて信管に着火する。
 あとは、弾けるだけ!!

 って、なにやってんのぉぉぉおおおおお?!

「近すぎ───」
「大丈夫!!」

 思わず伏せた猛に、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべたナナミ。
 その異常な動きにエルメスが反応し、周囲の騎士たちも剣を振り上げる。

「だって、あれ───発煙手榴弾だもん!!」

 シュバァァァアアアア!!

「な、なんだぁ?!」
 驚愕するエルメスの足元で手榴弾が異音を立てる。
 そして、地面に転がる円筒形の手榴弾から猛烈な勢いで白煙が噴き出した。

 それは最初は緩やかに地面に滞留したかと思うと、あっという間にモクモクと!!

「く! 煙幕だとぉ?!」

 思わず仰け反ってしまうエルメス。
 それを見越していたナナミはサッと身を屈めてトカレフを拾う。
「貴様ッ!」 
「───猛は、雑魚を!」

 へ?

「アタシはこいつをぉぉお!!」

 スパッ!! とトカレフ(拳銃)を拾ったナナミがダンッ! と一歩踏み出し両手で拳銃を構える!!

「舐めるなッ!」
 エルメスが今さらながら反応するが、ナナミの方が早い!!
「甘いよッ!」

 パァン!!

「ぐぁ!!」「アグッ!」

 メイベルの肩ごと背後のエルメスを撃ち抜くナナミ。
 驚いたのはエルメス。そして、メイベルと猛だ。
「ま、まさか……?!」

 ───人質ごと撃つだとぉ……と言いたげに背後に倒れるエルメス。

 メイベルに至っては何が起こったか分からず目をパチクリ。
 今さらながら肩の銃創から血が噴き出す。

「ちょ!? ナナミ?!」 

 もちろん猛もびっくり。
 ナナミの容赦のない、その行動に驚き思わず大刀を取り落としそうになる。

「殺せッっていったよ、あの人───?」

 ニッコリと良い笑顔で言うけど……。
「いや、そうだけど、それはぁぁああ───!!」


 あぁ! もう!!
 ナナミさん容赦ねーっす!!