第1話(プロローグ)
荒野を行く一台の馬車。
中には一人の青年。大男、老人、美少女。
彼等はいい意味で有名な勇者PT。
いつも通り獲物をもとめて放浪。探し求める。
お──……あった。
国も魔王からも忘れられたような小さな町が一つ。
「さぁ今日の獲物はなにかな?」
ニヤリと笑う勇者アレス。
狙った獲物は逃がさない。それが勇者としての矜持だから。
※
街はいつも以上に陰鬱な空気に包まれていた。
なぜなら、先日より質の悪いゴブリンの集団に度々襲撃されて疲れ果てていたのだ。
冒険者を募っても、田舎に腕利きが来るはずもない。
そこに、
「いよぉ! 街の皆さん、こんにちわ」
陽気な声とともにあのアレスが現れた。
あろうことか完全武装で……。
悪名を知る人々は逃げ惑い、警備兵と冒険者は立ち向かうも鎧袖一触、全滅。
なにせLvも装備も桁違い。龍鱗の鎧にオリハルコン製装備──かなうわけがない。
そして、意気揚々と冒険者ギルドを占拠したアレス達はそこを根城として戦利品を漁り始めた。
金、装備。あらゆる物を巻き上げていくも不満顔。大したものはないようだ。
そこで目を付けたのが酒場で働く女将と娘。どちらも美しく、娘は若すぎた──。
それを散々に嬲ってやろうと捕らえるも、ふと気になる二人組。変わった容姿のそいつらは街の防衛戦にも参加しなかったらしい。
女将が裸にされていても全く意に返さず安酒をカッくらっている。存在を無視されたように感じ苛立ちを感じたアレス。
しかし、PTのロリコン男のベルンが娘に手を出そうとした瞬間、二人組の片割れが豹変。
「子供に手を出すな」といって一瞬の早業でベルンを打ち倒す。
理解不能の攻撃、そして仲間が死んでいることを知り決闘を申し込む。
それを笑って受け入れた男は、酒場の前で奇妙な武器を手に勇者を挑発する。
「かかってこい、一瞬でケリをつけてやる」
その言葉が本当かどうか。
勇者の力のままに突撃したアレスだったが、そこで視界が真っ暗に。
パパパパパン! と破裂音を聞いたのはそのあとのことだった。
西部の保安官、ガルムの「早撃ち」が一瞬でケリをつけた瞬間であった。
その少し前の事───。
※ 1897年アメリカ西部 ※
一件の酒場で男達が昼間から酒。ガラは悪くどう見ても堅気ではない。
そこに、色気に溢れた騎兵隊の女将校エリナがズカズカと上がり込む。
「はーい。コイツ知らない?」
そう言って取り出したのは手配書。『ビリー・ザ・サーカス』…巷を騒がす強盗のボスだ。
最近はなりを潜めているのか活動を聞かなくなって久しい。
…それを酒場で聞く? 正気なのか?
「ここは酒場だ。酒を頼めクソアマ」
マスターはすげなく言う。
エリナは首をすくめて「じゃ、ミルクを」と注文し、酒場の嘲笑を誘う。
ゲラゲラと笑い囃し立てようとするも、不意に殺気に気付いて男達は黙る。
いつのまにか部屋の隅にフードの男。尋常ではない殺気をはなっていた。
そこで、差し出された大金に気付いたマスター。
情報料らしいそれを受け取ると『奇妙な、酒の受取人』について情報を漏らす。
それに満足したエリナは酒場を去っていく。
その瞬間酒場にいた男達がキビキビと動き出した。そこには連邦保安官の恐犬のガルムもいた。彼らは酔客などではなく、保安官とその補佐たちだったようだ。
この酒場が怪しいと思い張り込みをしていた矢先のこと──エリナに情報を奪われてしまった形になる。
エリナを出し抜くため、目的地を一気に目指すガルム達。
はたして、そこにはビリーの隠れ家があり一味が潜んでいた。
エリナとの鉢合わせを嫌ったガルムは強襲を決意。銃と爆薬を手に突撃を開始し、銃撃戦の幕があける。
数に勝るガルム達がビリーを追い詰めていったとき、ついにビリーをみつけ早撃ち勝負を挑むことに。
ガルムとビリー。
一瞬で勝負がつくかの見えた時──なんとエリナが軍を連れ戦場に乱入。全員を攻撃し始めた。
パニックに陥るなかビリーは逃走を図る。ガルムが追い付くも、まとめて殺そうするエリナに辟易とし一時休戦。
その時──。
ビリーが隠していた「賢者の石」が大量の血の匂いに誘われて次元の裂け目を生み出してしまう。
…気付いた時には見知らぬ世界にいた。
ガルム達は馬車に積まれた武器と一緒に異世界へ…。一方のエリナも、軍と共に異世界に来てしまった。
第2話
賢者の石の力で異世界にきてしまったガルム達。
ベリーの手下。ガルムの部下も同時に転移したらしいが、それらを次々と襲う影。
小柄なそいつ等は正体不明なるも敵だ。
次々に打ち倒し、何とかその場から脱出するガルム達。
その途中で、小柄な化け物に捕らえられていた少女を救出する。
すっかり怯え切った少女は、化け物を「ゴブリン」といった。
そして、数を増やすゴブリンはガルム達を追う。
何とか逃げるガルム一行だが、その視線の先に整然と撤退するエリナ達を発見。
場所の快速を活かしてゴブリンたちをトレインしつつエリナ達にぶつける。
物凄い形相でガルム達を睨むエリナだが、その場で兵器を展開しガトリングガンなどでゴブリンをあっという間に殲滅してしまった。
エリナにゴブリンを押し付け、時間を稼いだガルム達は命からがら逃げ伸びたのであった。
※ ※
エリナの騎兵隊およびゴブリンの群れの追撃を振り切ったガルムたち。
馬車の限界を感じ近場の水場で隠れつつ休息をとることにした。
そこで、救出した女の子に話しかけるがひどく怯えており、また逆上していた。
助けを求めた割に助かったことに対する恐怖をみせる少女。
事情を確認しようにも話にならないのでしばらくそっとしておき、ガルムとビリィは野営準備始めた。
湖畔に起きる小さな焚火。
そばにはくみ上げられた小銃と、膝の上には拳銃。
西部の野営スタイルで思い思いに過ごすガルムとビリィ。
本来保安官とアウトローが組むなんてありえない状況だが、もともと西部の男たちは柔軟性が高い。
この異常事態にすぐに順応してしまった。
敵同士であることは変わらないがいがみ合う状況でないことは互いに熟知していたので、こうして鍋を囲むことができる。
そう、ちょうど焚火に上には鉄なべがあり、ガルムとビリィがでっち上げたスープもどきがあった。
日の傍にはベーコンや日持ちするパンもある。
ふたりとも無言で食事をとり、軽く酒を飲む。
ビリィは盗賊団を失ったことをほんの少しだけ悲しみ、なにもなくなってしまったと空を仰ぐ。
そこには見たこともないい世界の空があったが、ふたりには同じ空に見えた。
すると、休息をとる二人のもとに腹をすかした少女がおずおずと訪れる。
馬車の中で泣きはらしたらしい目で、小さく腹を鳴らすと恥ずかしそうに目を伏せた。
ガルムは無言で飯を準備してやり、ビリィは陽気に誘った。
そして、食事をとりながら少女はようやくポツリポツリと事情を話し始めたのだった。
それは凄惨な異世界の現実。
周辺の村の出身であった少女は、あの地に巣食ったゴブリンの供物として差し出されていたのだった。
凶暴化したゴブリンは並大抵に戦力では手がつかられず、餌がなくなれば手当たり次第に周辺を襲うため時間稼ぎと、口減らしを兼ねて少女らがゴブリンの差し出されていたのだ。
しかし、今日。少女が逃走してしまったためゴブリンは近く周辺集落を襲う可能性があるという。
餌としての死体(ビリィたちの手下)は重便にあっても、他種族の女の胎を借りて繁殖する生物であるため定期的に女の身体を欲しているという。
そして、おそらく近々女の殻をを求めて近隣を襲うことが分かっていたため少女が生贄となったのだった。
第3話
話を聞いたガルムたちは愕然とする。
口減らしはまだわかるとしても、生贄として少女を差し出すという異常事態に嫌悪感を隠せない。
なによりも、それは結局ゴブリンの数を増やすだけの愚かな行為であると。
しかし、ガルムたちには少女に手を貸す義理もないし、気分でもなかった。
それよりも、今はここを脱してそれぞれの目的にために元の場所に変えることが最優先であった。
そう。
そのためにも結局はあのゴブリンの巣穴のあった場所を調査する必要があった。
そのことを告げると、少女は不可能だと告げる。
あの数のゴブリンを駆逐するのは勇者でもいない限り無理だと。
ましてや、二人ではとても──と。
訝しがったガルムは治安組織有無について確認した。
しかし、少女の話では騎士団といった組織はあるにはあるが、どれも小規模で遠征に耐えるものではないらしい。
なによりも、この地は未開の地として治安組織のようなものは存在せず、各自治体で自警団を持っている程度だという。
今までは小規模な群れなら傭兵や賞金稼ぎにちかい「冒険者」という連中が仕事の一環としてゴブリンを狩っていたらしい。
だが、あのゴブリンの巣穴はあまりにも大きい──。
しかし、どうしても調査をしたいガルムとビリィは利害が一致し、ゴブリンの巣穴を攻略することにした。
そのためまずは情報収集と少女を送り届けるために彼女の集落をおとずれることにした。
案内されるままに、集落を訪れたガルムたちであるが、そこで村から手厚い歓迎を受ける。具体的には弓矢の応酬だ。
慌てて反撃しようとするガルムたちであったが、少女の静止により双方の応酬が止まる。
そこで出会ったのが凄上冒険者を標榜する褐色肌の美女──ダークエルフの冒険者であった。
彼女は村がなけなしの金で雇った用心棒であり、ゴブリンの襲撃に備えていた。
しかし、ガルムたちの戦力が加わったことで、防衛から調査、または殲滅も可能と判断し、近隣の町の冒険者ギルドへガルムたちを連れていくことにした。
二人を冒険者として登録し、正式に討伐帯を組むことにしたのだ。
おりしも、近くに勇者(一話でガルムが倒した連中)が来ているという話があったため、やる気になったらしい。
そうして、町に連れていかれたガルムたちは、ダークエルフが伝令のため町を外している間に勇者たちと激突。
あえなく倒してしまった……。
※ ※
勇者を倒してしまったがために大幅な戦力ダウンを余儀なくされてしまった冒険者たち。
しかし、クソ勇者に頼るよりはと、自らの手でゴブリン討伐を決意する。
なによりもガルムたちに実力を見てやる気になったらしい。
そうして、冒険者は徒党を組んでゴブリンの巣に強襲を仕掛けた。
魔法使いや、剣士などは当初てんで好き勝手に戦おうとしていたのを、ガルムが従軍経験を活かして組織化し、ビリィなどを前線指揮官として活用することで効率的にゴブリンを駆逐していく。
そのうえ銃の威力は異世界でも群を抜いており、大量の銃器で次々にゴブリンを打倒していく。
そこでゴブリンの第一波を凌いだ冒険者たちはビリィやガルムとともに、ついにゴブリンの巣穴に突入する。
目的はゴブリンの殲滅と群れのリーダーであるキングを仕留めること。
そして、完全に巣穴を破壊することであった。
内部はひどい有様で、死体死体死体の山であった。調理されている人間やゴブリンの死体を見て戦意を喪失する冒険者がでるなか、順調にゴブリンを駆逐していくガルムたち。
特に拳銃と散弾銃の威力は群を抜いており、狭い場所に引き込んで戦うことで戦闘を有利に進めようとしていたゴブリンたちは次第に追い詰められていく。
そして、捕虜となっていた女性たちの部屋を発見し、解放するとともに、そこにいたゴブリンキングとビリィたちが激突する。
激戦のさなか、二手に分かれたガルムたち。
魔法を使うゴブリンシャーマンらの群れとかち合った冒険者とガルムはビリィひとりにキングの相手を任せて、ダークエルフと共同してシャーマンたちと闘う。その間にビリィも激戦を繰り広げなんとかキングを倒すことに成功する。
しかし、女児に混乱から回復しつつあるゴブリンは数にものを言わせてガルムたちを圧倒していく。
ないよりも、手持ちに銃弾に限りにあるガルムたちは時間が経つにつれ不利になる。
そうして、ピンチが訪れると、ガルムは救出した女性をビリィに預け、ダイナマイトを手にゴブリンの群れに突入する。
次に瞬間大爆発を起こし、ゴブリンの巣穴は崩壊した。
すんでのことろで脱出したビリィはガルムを思い少し涙ぐむ────が、ガルムはダイナマイトを設置した後素早く「元の遺跡」があった頑丈な部屋に退避し無事であった。
泣いていたことを誤魔化すビリィであったが、ひとまずゴブリンの巣穴の掃討は完了し、ビリィたちは英雄としてこの辺境の地で人マスの基盤を築くことに成功した。
そのころ、ゴブリンの巣穴を監視していた怪しい人影がいた。
彼らは魔族。
辺境の地の制服をもくろんで、ゴブリンを強化し自然に辺境の支配力が強まることを期待していたが失敗。
地団太を済んでいたところに、ビリィたちと同じような武装をした兵士たちを発見する。
規律の取れた彼らはいかにも強そうではあったが、食料などが困窮しているのか近隣で狩りをして食いつないでいるところを確認し、食糧支援を名目に接触を図ることにした。
それがエリナの騎兵隊と魔王軍との初接触である……。
荒野を行く一台の馬車。
中には一人の青年。大男、老人、美少女。
彼等はいい意味で有名な勇者PT。
いつも通り獲物をもとめて放浪。探し求める。
お──……あった。
国も魔王からも忘れられたような小さな町が一つ。
「さぁ今日の獲物はなにかな?」
ニヤリと笑う勇者アレス。
狙った獲物は逃がさない。それが勇者としての矜持だから。
※
街はいつも以上に陰鬱な空気に包まれていた。
なぜなら、先日より質の悪いゴブリンの集団に度々襲撃されて疲れ果てていたのだ。
冒険者を募っても、田舎に腕利きが来るはずもない。
そこに、
「いよぉ! 街の皆さん、こんにちわ」
陽気な声とともにあのアレスが現れた。
あろうことか完全武装で……。
悪名を知る人々は逃げ惑い、警備兵と冒険者は立ち向かうも鎧袖一触、全滅。
なにせLvも装備も桁違い。龍鱗の鎧にオリハルコン製装備──かなうわけがない。
そして、意気揚々と冒険者ギルドを占拠したアレス達はそこを根城として戦利品を漁り始めた。
金、装備。あらゆる物を巻き上げていくも不満顔。大したものはないようだ。
そこで目を付けたのが酒場で働く女将と娘。どちらも美しく、娘は若すぎた──。
それを散々に嬲ってやろうと捕らえるも、ふと気になる二人組。変わった容姿のそいつらは街の防衛戦にも参加しなかったらしい。
女将が裸にされていても全く意に返さず安酒をカッくらっている。存在を無視されたように感じ苛立ちを感じたアレス。
しかし、PTのロリコン男のベルンが娘に手を出そうとした瞬間、二人組の片割れが豹変。
「子供に手を出すな」といって一瞬の早業でベルンを打ち倒す。
理解不能の攻撃、そして仲間が死んでいることを知り決闘を申し込む。
それを笑って受け入れた男は、酒場の前で奇妙な武器を手に勇者を挑発する。
「かかってこい、一瞬でケリをつけてやる」
その言葉が本当かどうか。
勇者の力のままに突撃したアレスだったが、そこで視界が真っ暗に。
パパパパパン! と破裂音を聞いたのはそのあとのことだった。
西部の保安官、ガルムの「早撃ち」が一瞬でケリをつけた瞬間であった。
その少し前の事───。
※ 1897年アメリカ西部 ※
一件の酒場で男達が昼間から酒。ガラは悪くどう見ても堅気ではない。
そこに、色気に溢れた騎兵隊の女将校エリナがズカズカと上がり込む。
「はーい。コイツ知らない?」
そう言って取り出したのは手配書。『ビリー・ザ・サーカス』…巷を騒がす強盗のボスだ。
最近はなりを潜めているのか活動を聞かなくなって久しい。
…それを酒場で聞く? 正気なのか?
「ここは酒場だ。酒を頼めクソアマ」
マスターはすげなく言う。
エリナは首をすくめて「じゃ、ミルクを」と注文し、酒場の嘲笑を誘う。
ゲラゲラと笑い囃し立てようとするも、不意に殺気に気付いて男達は黙る。
いつのまにか部屋の隅にフードの男。尋常ではない殺気をはなっていた。
そこで、差し出された大金に気付いたマスター。
情報料らしいそれを受け取ると『奇妙な、酒の受取人』について情報を漏らす。
それに満足したエリナは酒場を去っていく。
その瞬間酒場にいた男達がキビキビと動き出した。そこには連邦保安官の恐犬のガルムもいた。彼らは酔客などではなく、保安官とその補佐たちだったようだ。
この酒場が怪しいと思い張り込みをしていた矢先のこと──エリナに情報を奪われてしまった形になる。
エリナを出し抜くため、目的地を一気に目指すガルム達。
はたして、そこにはビリーの隠れ家があり一味が潜んでいた。
エリナとの鉢合わせを嫌ったガルムは強襲を決意。銃と爆薬を手に突撃を開始し、銃撃戦の幕があける。
数に勝るガルム達がビリーを追い詰めていったとき、ついにビリーをみつけ早撃ち勝負を挑むことに。
ガルムとビリー。
一瞬で勝負がつくかの見えた時──なんとエリナが軍を連れ戦場に乱入。全員を攻撃し始めた。
パニックに陥るなかビリーは逃走を図る。ガルムが追い付くも、まとめて殺そうするエリナに辟易とし一時休戦。
その時──。
ビリーが隠していた「賢者の石」が大量の血の匂いに誘われて次元の裂け目を生み出してしまう。
…気付いた時には見知らぬ世界にいた。
ガルム達は馬車に積まれた武器と一緒に異世界へ…。一方のエリナも、軍と共に異世界に来てしまった。
第2話
賢者の石の力で異世界にきてしまったガルム達。
ベリーの手下。ガルムの部下も同時に転移したらしいが、それらを次々と襲う影。
小柄なそいつ等は正体不明なるも敵だ。
次々に打ち倒し、何とかその場から脱出するガルム達。
その途中で、小柄な化け物に捕らえられていた少女を救出する。
すっかり怯え切った少女は、化け物を「ゴブリン」といった。
そして、数を増やすゴブリンはガルム達を追う。
何とか逃げるガルム一行だが、その視線の先に整然と撤退するエリナ達を発見。
場所の快速を活かしてゴブリンたちをトレインしつつエリナ達にぶつける。
物凄い形相でガルム達を睨むエリナだが、その場で兵器を展開しガトリングガンなどでゴブリンをあっという間に殲滅してしまった。
エリナにゴブリンを押し付け、時間を稼いだガルム達は命からがら逃げ伸びたのであった。
※ ※
エリナの騎兵隊およびゴブリンの群れの追撃を振り切ったガルムたち。
馬車の限界を感じ近場の水場で隠れつつ休息をとることにした。
そこで、救出した女の子に話しかけるがひどく怯えており、また逆上していた。
助けを求めた割に助かったことに対する恐怖をみせる少女。
事情を確認しようにも話にならないのでしばらくそっとしておき、ガルムとビリィは野営準備始めた。
湖畔に起きる小さな焚火。
そばにはくみ上げられた小銃と、膝の上には拳銃。
西部の野営スタイルで思い思いに過ごすガルムとビリィ。
本来保安官とアウトローが組むなんてありえない状況だが、もともと西部の男たちは柔軟性が高い。
この異常事態にすぐに順応してしまった。
敵同士であることは変わらないがいがみ合う状況でないことは互いに熟知していたので、こうして鍋を囲むことができる。
そう、ちょうど焚火に上には鉄なべがあり、ガルムとビリィがでっち上げたスープもどきがあった。
日の傍にはベーコンや日持ちするパンもある。
ふたりとも無言で食事をとり、軽く酒を飲む。
ビリィは盗賊団を失ったことをほんの少しだけ悲しみ、なにもなくなってしまったと空を仰ぐ。
そこには見たこともないい世界の空があったが、ふたりには同じ空に見えた。
すると、休息をとる二人のもとに腹をすかした少女がおずおずと訪れる。
馬車の中で泣きはらしたらしい目で、小さく腹を鳴らすと恥ずかしそうに目を伏せた。
ガルムは無言で飯を準備してやり、ビリィは陽気に誘った。
そして、食事をとりながら少女はようやくポツリポツリと事情を話し始めたのだった。
それは凄惨な異世界の現実。
周辺の村の出身であった少女は、あの地に巣食ったゴブリンの供物として差し出されていたのだった。
凶暴化したゴブリンは並大抵に戦力では手がつかられず、餌がなくなれば手当たり次第に周辺を襲うため時間稼ぎと、口減らしを兼ねて少女らがゴブリンの差し出されていたのだ。
しかし、今日。少女が逃走してしまったためゴブリンは近く周辺集落を襲う可能性があるという。
餌としての死体(ビリィたちの手下)は重便にあっても、他種族の女の胎を借りて繁殖する生物であるため定期的に女の身体を欲しているという。
そして、おそらく近々女の殻をを求めて近隣を襲うことが分かっていたため少女が生贄となったのだった。
第3話
話を聞いたガルムたちは愕然とする。
口減らしはまだわかるとしても、生贄として少女を差し出すという異常事態に嫌悪感を隠せない。
なによりも、それは結局ゴブリンの数を増やすだけの愚かな行為であると。
しかし、ガルムたちには少女に手を貸す義理もないし、気分でもなかった。
それよりも、今はここを脱してそれぞれの目的にために元の場所に変えることが最優先であった。
そう。
そのためにも結局はあのゴブリンの巣穴のあった場所を調査する必要があった。
そのことを告げると、少女は不可能だと告げる。
あの数のゴブリンを駆逐するのは勇者でもいない限り無理だと。
ましてや、二人ではとても──と。
訝しがったガルムは治安組織有無について確認した。
しかし、少女の話では騎士団といった組織はあるにはあるが、どれも小規模で遠征に耐えるものではないらしい。
なによりも、この地は未開の地として治安組織のようなものは存在せず、各自治体で自警団を持っている程度だという。
今までは小規模な群れなら傭兵や賞金稼ぎにちかい「冒険者」という連中が仕事の一環としてゴブリンを狩っていたらしい。
だが、あのゴブリンの巣穴はあまりにも大きい──。
しかし、どうしても調査をしたいガルムとビリィは利害が一致し、ゴブリンの巣穴を攻略することにした。
そのためまずは情報収集と少女を送り届けるために彼女の集落をおとずれることにした。
案内されるままに、集落を訪れたガルムたちであるが、そこで村から手厚い歓迎を受ける。具体的には弓矢の応酬だ。
慌てて反撃しようとするガルムたちであったが、少女の静止により双方の応酬が止まる。
そこで出会ったのが凄上冒険者を標榜する褐色肌の美女──ダークエルフの冒険者であった。
彼女は村がなけなしの金で雇った用心棒であり、ゴブリンの襲撃に備えていた。
しかし、ガルムたちの戦力が加わったことで、防衛から調査、または殲滅も可能と判断し、近隣の町の冒険者ギルドへガルムたちを連れていくことにした。
二人を冒険者として登録し、正式に討伐帯を組むことにしたのだ。
おりしも、近くに勇者(一話でガルムが倒した連中)が来ているという話があったため、やる気になったらしい。
そうして、町に連れていかれたガルムたちは、ダークエルフが伝令のため町を外している間に勇者たちと激突。
あえなく倒してしまった……。
※ ※
勇者を倒してしまったがために大幅な戦力ダウンを余儀なくされてしまった冒険者たち。
しかし、クソ勇者に頼るよりはと、自らの手でゴブリン討伐を決意する。
なによりもガルムたちに実力を見てやる気になったらしい。
そうして、冒険者は徒党を組んでゴブリンの巣に強襲を仕掛けた。
魔法使いや、剣士などは当初てんで好き勝手に戦おうとしていたのを、ガルムが従軍経験を活かして組織化し、ビリィなどを前線指揮官として活用することで効率的にゴブリンを駆逐していく。
そのうえ銃の威力は異世界でも群を抜いており、大量の銃器で次々にゴブリンを打倒していく。
そこでゴブリンの第一波を凌いだ冒険者たちはビリィやガルムとともに、ついにゴブリンの巣穴に突入する。
目的はゴブリンの殲滅と群れのリーダーであるキングを仕留めること。
そして、完全に巣穴を破壊することであった。
内部はひどい有様で、死体死体死体の山であった。調理されている人間やゴブリンの死体を見て戦意を喪失する冒険者がでるなか、順調にゴブリンを駆逐していくガルムたち。
特に拳銃と散弾銃の威力は群を抜いており、狭い場所に引き込んで戦うことで戦闘を有利に進めようとしていたゴブリンたちは次第に追い詰められていく。
そして、捕虜となっていた女性たちの部屋を発見し、解放するとともに、そこにいたゴブリンキングとビリィたちが激突する。
激戦のさなか、二手に分かれたガルムたち。
魔法を使うゴブリンシャーマンらの群れとかち合った冒険者とガルムはビリィひとりにキングの相手を任せて、ダークエルフと共同してシャーマンたちと闘う。その間にビリィも激戦を繰り広げなんとかキングを倒すことに成功する。
しかし、女児に混乱から回復しつつあるゴブリンは数にものを言わせてガルムたちを圧倒していく。
ないよりも、手持ちに銃弾に限りにあるガルムたちは時間が経つにつれ不利になる。
そうして、ピンチが訪れると、ガルムは救出した女性をビリィに預け、ダイナマイトを手にゴブリンの群れに突入する。
次に瞬間大爆発を起こし、ゴブリンの巣穴は崩壊した。
すんでのことろで脱出したビリィはガルムを思い少し涙ぐむ────が、ガルムはダイナマイトを設置した後素早く「元の遺跡」があった頑丈な部屋に退避し無事であった。
泣いていたことを誤魔化すビリィであったが、ひとまずゴブリンの巣穴の掃討は完了し、ビリィたちは英雄としてこの辺境の地で人マスの基盤を築くことに成功した。
そのころ、ゴブリンの巣穴を監視していた怪しい人影がいた。
彼らは魔族。
辺境の地の制服をもくろんで、ゴブリンを強化し自然に辺境の支配力が強まることを期待していたが失敗。
地団太を済んでいたところに、ビリィたちと同じような武装をした兵士たちを発見する。
規律の取れた彼らはいかにも強そうではあったが、食料などが困窮しているのか近隣で狩りをして食いつないでいるところを確認し、食糧支援を名目に接触を図ることにした。
それがエリナの騎兵隊と魔王軍との初接触である……。