俺たちは一時間ぐらい電車に乗って自分たちの住んでいる県から出た。会場であるライブハウスの最寄り駅の改札を抜けるとまず目に入るのがあちらこちらにそびえる高層ビル。そのビルの壁にはニュースが流れる巨大スクリーン。そして何よりも地元じゃ考えられないような多くの人々が行き交う交差点。その大きな人の流れの中でぶつかったりしないのだろうか。
隣の県に住んでいるとは言え、テレビでしか見たことのないような場所に生まれて初めて来てそのすごさに圧倒された。
「そんな不思議そうに見ちゃって。お上りさんみたいだよ」
「言い回しが古いぞ」
開園まで時間があったので近くのカフェで食事をしたり、美咲に連れられて有名なブランドがたくさん入っているこの街を象徴するファッションビルに行ったりして時間を過ごした。
夕方になり開場の時間が近づいてきたので中心街から少し離れた会場に向かうと多くの観客が列をなして並んでいた。列の最後尾を見つけその後ろに着いた。
「やっぱ結構並んでるな」
「みたいだね」
「ライブ自体お前も初めてなのか?」
「そうなの。私も初めてなんだよね」
そんな会話をしながら並んでいるとスタッフらしき人が出て開場の合図を出した。列が動き出しどんどん会場内に流れていった。
会場に入り五百円を払ってドリンク引換券といったチケットと交換した。その場で使おうと思ったけれども二人でこのごった返している中で引き換えに行くのははぐれそうだったので帰りにすることに決めた。
ライブスペースに入るとそこは薄暗く広い空間に白色灯に照らされたステージがあるだけだった。ステージの上にはドラムセットや巨大なアンプ、ギターやベースをスタッフらしき人がチューニングをしていた。
「ライブハウスって椅子ないものなんだな」
「安心して暴れられるね」
「初心者だからな。そんなことしねえわ。お前こそ暴れるなよ」
「おしとやかな女子だから暴れることなんてしませーん」
そんなやり取りをしている間にも人はたくさん入って来てライブスペースは人でいっぱいになってきた。開園を今か今かと待っている観客がステージの後ろに控えているであろうバンドメンバーに声援をかけ始めた。一人が呼びかけるとさらにもう一人そしてもう一人と大きな声援となっていき観客の熱気が高まっていった。
あの舞台の向こう側にはもうバンドメンバーが控えているんだ。今までテレビの向こう側の存在でしかなかった彼らがすぐそこにいる。そう考えると胸が高鳴った。そんなとき一人のスタッフらしき人がマイクを持ってステージの真ん中に来るとライブ中は暴れないことやステージにものを投げないことなど一通りの注意事項を説明し終えると。
「それじゃあ。これからライブの始まりだ!」
そうスタッフが叫ぶと舞台袖からバンドメンバーが登場した。観客の声がさらに大きくなった。皆が彼らの名前を呼んだ。俺もつられて大きな声援を送った。そして彼らは一曲目を演奏した。
熱気が最高潮に達した瞬間だった。自然と手を振り上げていた、隣の美咲を見ると彼女も手を振り上げ全力で楽しんでいた。汗が流れようと他の人と身体がぶつかっても手を振り上げた。初めて彼らの音楽を聴いたときを思い出す。十四才のとき、偶然テレビで流れた彼らの曲。音楽なんて興味のなかった俺が音楽で高揚したとき。その興奮が今ここに。俺と美咲は夢中になって曲に合わせて声援を送った。興奮と狂熱の幻想のこのときだけは俺は「十四才」の自分だった。
隣の県に住んでいるとは言え、テレビでしか見たことのないような場所に生まれて初めて来てそのすごさに圧倒された。
「そんな不思議そうに見ちゃって。お上りさんみたいだよ」
「言い回しが古いぞ」
開園まで時間があったので近くのカフェで食事をしたり、美咲に連れられて有名なブランドがたくさん入っているこの街を象徴するファッションビルに行ったりして時間を過ごした。
夕方になり開場の時間が近づいてきたので中心街から少し離れた会場に向かうと多くの観客が列をなして並んでいた。列の最後尾を見つけその後ろに着いた。
「やっぱ結構並んでるな」
「みたいだね」
「ライブ自体お前も初めてなのか?」
「そうなの。私も初めてなんだよね」
そんな会話をしながら並んでいるとスタッフらしき人が出て開場の合図を出した。列が動き出しどんどん会場内に流れていった。
会場に入り五百円を払ってドリンク引換券といったチケットと交換した。その場で使おうと思ったけれども二人でこのごった返している中で引き換えに行くのははぐれそうだったので帰りにすることに決めた。
ライブスペースに入るとそこは薄暗く広い空間に白色灯に照らされたステージがあるだけだった。ステージの上にはドラムセットや巨大なアンプ、ギターやベースをスタッフらしき人がチューニングをしていた。
「ライブハウスって椅子ないものなんだな」
「安心して暴れられるね」
「初心者だからな。そんなことしねえわ。お前こそ暴れるなよ」
「おしとやかな女子だから暴れることなんてしませーん」
そんなやり取りをしている間にも人はたくさん入って来てライブスペースは人でいっぱいになってきた。開園を今か今かと待っている観客がステージの後ろに控えているであろうバンドメンバーに声援をかけ始めた。一人が呼びかけるとさらにもう一人そしてもう一人と大きな声援となっていき観客の熱気が高まっていった。
あの舞台の向こう側にはもうバンドメンバーが控えているんだ。今までテレビの向こう側の存在でしかなかった彼らがすぐそこにいる。そう考えると胸が高鳴った。そんなとき一人のスタッフらしき人がマイクを持ってステージの真ん中に来るとライブ中は暴れないことやステージにものを投げないことなど一通りの注意事項を説明し終えると。
「それじゃあ。これからライブの始まりだ!」
そうスタッフが叫ぶと舞台袖からバンドメンバーが登場した。観客の声がさらに大きくなった。皆が彼らの名前を呼んだ。俺もつられて大きな声援を送った。そして彼らは一曲目を演奏した。
熱気が最高潮に達した瞬間だった。自然と手を振り上げていた、隣の美咲を見ると彼女も手を振り上げ全力で楽しんでいた。汗が流れようと他の人と身体がぶつかっても手を振り上げた。初めて彼らの音楽を聴いたときを思い出す。十四才のとき、偶然テレビで流れた彼らの曲。音楽なんて興味のなかった俺が音楽で高揚したとき。その興奮が今ここに。俺と美咲は夢中になって曲に合わせて声援を送った。興奮と狂熱の幻想のこのときだけは俺は「十四才」の自分だった。