ショウタくんの言う通り、ぼくは次の日に怖い夢を見ることはなかった。
そして、その日から、ぼくが日が暮れてから誰もいない公園に行くと必ずショウタくんも来ていて、ぼくはいつのまにかショウタくんにいろいろなことを話すようになっていた。
学校のことも、お母さんのことも、そして、怖くて悲しくて辛くて誰にも話したくないと思っていた、あの事故のこともショウタくんにはなぜか素直に話すことができた。
ぼくとお父さんは2ヶ月前に交通事故に遭った。ぼくは助手席に座っていて、軽いケガで済んだけれど、運転席に他の車が衝突してきて、お父さんは死んだ。
車が衝突した瞬間は記憶にない。でも、運転席を見たら、ぶつかってきた車のタイヤがめり込んでるのが見えて、お父さんは身体が変な感じに曲がっていて動けなくて、顔中から血を流してた。そして、「こっちを見るな、早く外に出るんだ!」って何回も何十回もぼくに言った。それでもぼくは怖くて動けなくて、お父さんを見てるしかなかった。少ししてから、誰かがぼくの身体を持ち上げて車から出してくれるまでぼくは動けなかった。
お父さんが死んだって聞いたのは、それから1週間後のぼくが退院する日だった。本当は『ソクシ』だったけど、ぼくがショックを受けないようにお母さんが退院するまで黙っていたそうだ。ぼくは『ソクシ』の意味がわからなくて、お母さんに聞くと、「車同士が衝突した瞬間に、もうお父さんは亡くなっていたみたいなの」と大粒の涙をこぼしながら教えてくれた。
「嘘だ! 衝突してからずっとお父さんは、ぼくに早く外に出ろって言ってくれてたよ。多分、10分くらいずっとぼくに話しかけてた! まだ死んでなかったんだよ!」
ぼくが一生懸命そう説明すると、お母さんは「うん、うん」って泣きながら繰り返してぼくを抱きしめた。
ぼくが誰にも話したくなかったあの事故のことを話すと、ショウタくんは泣いていた。
それを見て、もう泣かないようにしようと思っていたのに、ぼくも一緒に泣いてしまった。ショウタくんは優しくぼくの肩に手をかけてくれた。
しばらくするとショウタくんは、ぼくの家に遊びに来るようになった。昼間はお母さんが仕事でいないから、ゆっくりと2人で遊んだり話したりすることができる。でも、ぼくがジュースとかお菓子とかを出してあげてもショウタくんは飲んだり食べたりすることはなかった。
「なんでお菓子食べないの?」
「僕はお菓子が好きじゃないから・・・」
ショウタくんはそう言うけど、ぼくはもしかしたら、病気で食べたり飲んだりできないのかもしれないと思った。
「病気とかのせいでお菓子食べられないの?」
「そうじゃないよ。心配してくれてありがとう、コウタくんの病気も早く治るといいね」
確かにぼくは生まれつき『イデンシシッカン』っていう病気で、小学校に入学する前から、定期的に病院に通っている。
「ぼくの病気のことも知ってるの?」
「そうだよ、僕はコウタくんのことはなんでも知っているし、何を考えているかもわかるんだ」
確かにショウタくんは、まるでぼくの心の中が見えるみたいに、考えていることをわかってくれる。ぼくが何を話したいのか、何が好きなのか、何を望んでいるのかをすごくわかってくれる。それはお父さんが死んで心が疲れているぼくにとって、すごく心地が良かった。ショウタくんと話していると、ぼくの心を塞いでいる黒いコンクリートの塊みたいなものが、どんどんと剥がれ落ちていく感じがしていた。
そして、その日から、ぼくが日が暮れてから誰もいない公園に行くと必ずショウタくんも来ていて、ぼくはいつのまにかショウタくんにいろいろなことを話すようになっていた。
学校のことも、お母さんのことも、そして、怖くて悲しくて辛くて誰にも話したくないと思っていた、あの事故のこともショウタくんにはなぜか素直に話すことができた。
ぼくとお父さんは2ヶ月前に交通事故に遭った。ぼくは助手席に座っていて、軽いケガで済んだけれど、運転席に他の車が衝突してきて、お父さんは死んだ。
車が衝突した瞬間は記憶にない。でも、運転席を見たら、ぶつかってきた車のタイヤがめり込んでるのが見えて、お父さんは身体が変な感じに曲がっていて動けなくて、顔中から血を流してた。そして、「こっちを見るな、早く外に出るんだ!」って何回も何十回もぼくに言った。それでもぼくは怖くて動けなくて、お父さんを見てるしかなかった。少ししてから、誰かがぼくの身体を持ち上げて車から出してくれるまでぼくは動けなかった。
お父さんが死んだって聞いたのは、それから1週間後のぼくが退院する日だった。本当は『ソクシ』だったけど、ぼくがショックを受けないようにお母さんが退院するまで黙っていたそうだ。ぼくは『ソクシ』の意味がわからなくて、お母さんに聞くと、「車同士が衝突した瞬間に、もうお父さんは亡くなっていたみたいなの」と大粒の涙をこぼしながら教えてくれた。
「嘘だ! 衝突してからずっとお父さんは、ぼくに早く外に出ろって言ってくれてたよ。多分、10分くらいずっとぼくに話しかけてた! まだ死んでなかったんだよ!」
ぼくが一生懸命そう説明すると、お母さんは「うん、うん」って泣きながら繰り返してぼくを抱きしめた。
ぼくが誰にも話したくなかったあの事故のことを話すと、ショウタくんは泣いていた。
それを見て、もう泣かないようにしようと思っていたのに、ぼくも一緒に泣いてしまった。ショウタくんは優しくぼくの肩に手をかけてくれた。
しばらくするとショウタくんは、ぼくの家に遊びに来るようになった。昼間はお母さんが仕事でいないから、ゆっくりと2人で遊んだり話したりすることができる。でも、ぼくがジュースとかお菓子とかを出してあげてもショウタくんは飲んだり食べたりすることはなかった。
「なんでお菓子食べないの?」
「僕はお菓子が好きじゃないから・・・」
ショウタくんはそう言うけど、ぼくはもしかしたら、病気で食べたり飲んだりできないのかもしれないと思った。
「病気とかのせいでお菓子食べられないの?」
「そうじゃないよ。心配してくれてありがとう、コウタくんの病気も早く治るといいね」
確かにぼくは生まれつき『イデンシシッカン』っていう病気で、小学校に入学する前から、定期的に病院に通っている。
「ぼくの病気のことも知ってるの?」
「そうだよ、僕はコウタくんのことはなんでも知っているし、何を考えているかもわかるんだ」
確かにショウタくんは、まるでぼくの心の中が見えるみたいに、考えていることをわかってくれる。ぼくが何を話したいのか、何が好きなのか、何を望んでいるのかをすごくわかってくれる。それはお父さんが死んで心が疲れているぼくにとって、すごく心地が良かった。ショウタくんと話していると、ぼくの心を塞いでいる黒いコンクリートの塊みたいなものが、どんどんと剥がれ落ちていく感じがしていた。