すっかりと食べ終え、片付けは謙太(けんた)知朗(ともろう)で行う。夏子(なつこ)ちゃんも申し出てくれたのだが、夏子ちゃんはお客さま扱いである。今夏子ちゃんはツルさんと話をしていた。

「トモ、ガレットありがとう。夏子ちゃんほんまに喜んどったわぁ」

「保護者かよ。つかメインはティラミスだろ。気に入ってくれたみたいで良かったな」

「うん。食べたことのないもんやから、それが怖かったんやけどねぇ。口に合わへんかったらどうしようかと思ってたもん」

「そうだよなぁ。と言うか謙太、お前夏子の手の甲にキスしてただろ」

「うん」

「良くやるよなぁ」

 知朗の表情は呆れた様な感心した様な、複雑なものになっていた。

「減るもんや無いしねぇ」

「そりゃあそうだろうけどさぁ。結果的に夏子も喜んでたみたいだから良かったものの」

「そこは賭けやったけどねぇ。でも夏子ちゃんは今ここにおる人の中で、僕が一番好みやて言うてたし、今ほどセクハラとかそういうのが無い時代の子やし、なんせ無邪気な子やから大丈夫やろって」

「また危険な賭けに出たもんだ」

 知朗はやはり呆れた様に言う。そして片付け終え、テーブルの端の夏子ちゃんとツルさんの元へ向かうと、夏子ちゃんが「謙太さん! トモさん!」と満面の笑顔で駆け寄って来た。

「本当にありがとう! ティラミスもガレットもとっても美味しかった!」

「ありがとう。こっちこそほんまに良かったわぁ」

「ああ」

「ツルさんに相談して良かったー。アリスちゃんのケーキと太郎(たろう)くんのカレー見てたから、私のティラミスもお願いしたら作ってくれないかなぁ、て思ってツルさんに相談したら、直接謙太さんとトモさんに言ってみたら良いよって。思い切って言ってみて良かった!」

「そうなんやぁ。もっと早うに言うてくれて良かったのに〜」

「ほうら、言ったじゃろう? 謙太(ぼう)とトモ坊は叶えてくれるとのう」

「でもやっぱり遠慮しちゃうよー。でも大満足!」

「良かったわぁ」

「おう」

「でね、私、もうひとつ食べたいものができたんだー」

「え、なぁに?」

 謙太か知朗が作れるものなら良いのだが。夏子ちゃんはいたずらっ子の様な表情になって言った。

「私、謙太さんとトモさんのお店のラーメンが食べたい!」

「へ?」

「あ?」

 謙太と知朗はぽかんと口を開けた。