今日は特に、一日休日だからこのまま家に籠っていたいと思ってしまう。温かい部屋のベッドで、毛布にくるまりぬくぬくとスマホをいじったり読書したり寝たり。最高にだらけた無駄な時間を過ごしたく思う。
だけどしない。……できないのだ。
朝食を食べ終え、テレビはそのまま。流し台に置かれた食器を一緒に洗い流す。終わったらすぐ洗濯物を干しに向かった。
小さくて狭い庭に出た。びゅう、と吹きすぎる風が、若干火照っていた身体から熱を奪っていく。澄んだ空気が肌を刺す。それが嫌に心地よい。
庭は、洗濯物を干せば埋め尽くされてしまうくらい、狭い。その上緑なんてほとんどない。殺風景な庭だ。もはや庭と呼べるかもわからない。
それも仕方ないことかもしれない、と以前は思っていた。だが、宵花屋のあの庭を見てからは、物悲しい気持ちが芽生えるようになった。
結構、綺麗だったからな、と苦笑する。冬前の時期でも、しっかりと手入れされている下段は美しいのだ。手間がかかっているからこそ、輝いて見える。
だからと言って庭を綺麗にするつもりはない。ここはここ、宵花屋は宵花屋だ。バランスを崩すようなことは、したくなかった。
熱を奪われ出して数分が経つ。さすがに寒くなってきたので、慌てて干し終え中に入った。
寒さを紛らわせるように両腕を摩りながら、窓を閉める。ふと、時計に目をやった。時刻は十時を指す前だ。ちょうどいい。
カーテンを閉めて、薄暗くなった部屋。籠を抱えてからテレビを消した。
支度して、家を出てから約一時間弱が経過する。バスを降りた私の前には、総合病院が建っていた。
私は立ち止まることもなく、院内へと足を運ぶ。変わらず張り詰めた空気に満たされた院内。静かで緊張が煽られていく。
一度だけ耳に触れた。シャラン、と揺れる鎖の音が響く。周りには聞こえない、本当に小さな音。
ぐっと前を向いて受付へ向かう。受付の人とはもう顔見知りにすらなっていた。笑顔で会釈されて、かくかくと同じように頭を下げる。……これは何度やっても慣れないな、と後から一人で苦笑するのも、いつものこととなっていた。
空気にあてられて、少しだけ緊張しながらも、目的の場所へ真っ直ぐ歩く。もちろん、502号室。笹波菖蒲の眠る部屋だ。
「――あんた、案外ひまを持て余している感じ?」
だけどしない。……できないのだ。
朝食を食べ終え、テレビはそのまま。流し台に置かれた食器を一緒に洗い流す。終わったらすぐ洗濯物を干しに向かった。
小さくて狭い庭に出た。びゅう、と吹きすぎる風が、若干火照っていた身体から熱を奪っていく。澄んだ空気が肌を刺す。それが嫌に心地よい。
庭は、洗濯物を干せば埋め尽くされてしまうくらい、狭い。その上緑なんてほとんどない。殺風景な庭だ。もはや庭と呼べるかもわからない。
それも仕方ないことかもしれない、と以前は思っていた。だが、宵花屋のあの庭を見てからは、物悲しい気持ちが芽生えるようになった。
結構、綺麗だったからな、と苦笑する。冬前の時期でも、しっかりと手入れされている下段は美しいのだ。手間がかかっているからこそ、輝いて見える。
だからと言って庭を綺麗にするつもりはない。ここはここ、宵花屋は宵花屋だ。バランスを崩すようなことは、したくなかった。
熱を奪われ出して数分が経つ。さすがに寒くなってきたので、慌てて干し終え中に入った。
寒さを紛らわせるように両腕を摩りながら、窓を閉める。ふと、時計に目をやった。時刻は十時を指す前だ。ちょうどいい。
カーテンを閉めて、薄暗くなった部屋。籠を抱えてからテレビを消した。
支度して、家を出てから約一時間弱が経過する。バスを降りた私の前には、総合病院が建っていた。
私は立ち止まることもなく、院内へと足を運ぶ。変わらず張り詰めた空気に満たされた院内。静かで緊張が煽られていく。
一度だけ耳に触れた。シャラン、と揺れる鎖の音が響く。周りには聞こえない、本当に小さな音。
ぐっと前を向いて受付へ向かう。受付の人とはもう顔見知りにすらなっていた。笑顔で会釈されて、かくかくと同じように頭を下げる。……これは何度やっても慣れないな、と後から一人で苦笑するのも、いつものこととなっていた。
空気にあてられて、少しだけ緊張しながらも、目的の場所へ真っ直ぐ歩く。もちろん、502号室。笹波菖蒲の眠る部屋だ。
「――あんた、案外ひまを持て余している感じ?」
