「花を知る人なら、案外こっちの方が、魅惑的に見えるかもしれないんだから」
ニタニタと笑い、手を止めてスマホの画面を私に見せた。
「……何それ、綺麗じゃん」と思わず呟くと、スマホをすぐにしまいこんで、「小種ちゃんはやっぱり見る目があるじゃあないかい?」と言いつつ花束を仕上げる。
いじり終えた店主はそれをすぐに脇によけ、代わりに、スノードームみたいな丸い瓶を揺らした。
「そんな君にクエスチョン。これ、なあんだ?」
店主が悪戯っぽく笑って聞いてきた。「スノードーム?」と自信ありげに言うも、彼はアハハ、と笑って、首をゆるく振る。
「ざ~んね~ん、不正解だ。……正解はハーバリウム。スノードームでも、間違いではないんだけどねえ」
店主の言葉に、またも首を傾げる。
店主は私を一度チラリ、と見たが、何も言わず、彼は自分の目線に合わせてそれを持ち上げた。
「――花屋はねえ、花を売るだけが仕事じゃあないんだ」
ガラス瓶に入っている花……スイートピーが、かすかに揺れた。
ふっと微笑んだ店主がそれを下ろした。その流れで手に取ったのは、別のガラス瓶。それには何も入っていない。
さらにドライフラワーのスイートピーをいくつか手に取って、軽く、短くカットする。空いている片手が私に伸ばされた。
「その子、返して~」
慌てて持っていたドライフラワーを返すと、店主はそれもカットした。あっという間に花の部分だけが残る。
それをまだ何も入れていないガラス瓶に、ピンセットで次々と詰め込んでいった。
「――は~い、かんせ~い」
詰め込んだ後、透明の液体を注ぎ込んだ彼は、そう言ってキュッと蓋を占めた。途端に詰められていたスイートピーがふわり、と花開く。
「……なんか、オイル漬け? みたい」
印象が、と言った私を、店主が嬉しそうな顔で振り返った。
「おお、その通りさ。なんだ~、やっぱりわかってるじゃあないか」
え? と首を傾げると、店主は新しく作ったスイートピーの花だけが詰められたガラス瓶を私に差し出す。
受け取り、自分の目線まで持ち上げて眺めていると、店主はもう一つを透明な袋に入れて、ラッピングし出す。
「ハーバリウムは、別名花のオイル漬けって言ってね」
薄いピンク色のリボンを、丁寧にリボン結びしながら、そう言った。花のオイル漬け、と聞いて、なんとなく料理が思い浮かぶ。
ニタニタと笑い、手を止めてスマホの画面を私に見せた。
「……何それ、綺麗じゃん」と思わず呟くと、スマホをすぐにしまいこんで、「小種ちゃんはやっぱり見る目があるじゃあないかい?」と言いつつ花束を仕上げる。
いじり終えた店主はそれをすぐに脇によけ、代わりに、スノードームみたいな丸い瓶を揺らした。
「そんな君にクエスチョン。これ、なあんだ?」
店主が悪戯っぽく笑って聞いてきた。「スノードーム?」と自信ありげに言うも、彼はアハハ、と笑って、首をゆるく振る。
「ざ~んね~ん、不正解だ。……正解はハーバリウム。スノードームでも、間違いではないんだけどねえ」
店主の言葉に、またも首を傾げる。
店主は私を一度チラリ、と見たが、何も言わず、彼は自分の目線に合わせてそれを持ち上げた。
「――花屋はねえ、花を売るだけが仕事じゃあないんだ」
ガラス瓶に入っている花……スイートピーが、かすかに揺れた。
ふっと微笑んだ店主がそれを下ろした。その流れで手に取ったのは、別のガラス瓶。それには何も入っていない。
さらにドライフラワーのスイートピーをいくつか手に取って、軽く、短くカットする。空いている片手が私に伸ばされた。
「その子、返して~」
慌てて持っていたドライフラワーを返すと、店主はそれもカットした。あっという間に花の部分だけが残る。
それをまだ何も入れていないガラス瓶に、ピンセットで次々と詰め込んでいった。
「――は~い、かんせ~い」
詰め込んだ後、透明の液体を注ぎ込んだ彼は、そう言ってキュッと蓋を占めた。途端に詰められていたスイートピーがふわり、と花開く。
「……なんか、オイル漬け? みたい」
印象が、と言った私を、店主が嬉しそうな顔で振り返った。
「おお、その通りさ。なんだ~、やっぱりわかってるじゃあないか」
え? と首を傾げると、店主は新しく作ったスイートピーの花だけが詰められたガラス瓶を私に差し出す。
受け取り、自分の目線まで持ち上げて眺めていると、店主はもう一つを透明な袋に入れて、ラッピングし出す。
「ハーバリウムは、別名花のオイル漬けって言ってね」
薄いピンク色のリボンを、丁寧にリボン結びしながら、そう言った。花のオイル漬け、と聞いて、なんとなく料理が思い浮かぶ。