「あの……。伊吹さんはどこに住んでいらっしゃるんですか?」
今までここで生活していたのではないなら、近くに家があるのだろうか。さすがに伊吹さんと一緒に住むわけにはいかないけれど、ここを私が占領してしまっても大丈夫なのだろうか。
心配になってたずねたのに、伊吹さんは無言で私をにらみつけた。
刃物を押しつけられたみたいに背筋が冷えて、さっきは親しみを覚えた気持ちがまたすうっと遠くなる。
「余計な詮索はするな」
「ごめんなさい……」
彼の顔はとても怖かった。プライベートを探られるのが嫌いなタイプなのだろうか。なんにせよ、仕事以外のことはたずねないほうがよさそうだ。
少し寂しく思いつつも、伊吹さんとはビジネスライクに徹しようと決めた。
二階の住居を見て回ると、お風呂とトイレ、狭めのキッチンがついていた。六畳の個室には、年季の入ったちゃぶ台と、小さめの箪笥がそなえつけてある。押し入れの中に布団もひとそろいあった。これだけあれば不自由せずに暮らせそうだ。
さすがに今日は疲れたので早めに寝ようと決める。コンビニの漬物とレトルトのご飯で作ったお茶漬けを食べ、お風呂に入り終わると、外はもうすっかり暗くなっていた。
濃紺の夜空には、まあるい栗きんとんのような月が輝いている。窓から空を見上げて、今日が満月だということに気づいた。
今までここで生活していたのではないなら、近くに家があるのだろうか。さすがに伊吹さんと一緒に住むわけにはいかないけれど、ここを私が占領してしまっても大丈夫なのだろうか。
心配になってたずねたのに、伊吹さんは無言で私をにらみつけた。
刃物を押しつけられたみたいに背筋が冷えて、さっきは親しみを覚えた気持ちがまたすうっと遠くなる。
「余計な詮索はするな」
「ごめんなさい……」
彼の顔はとても怖かった。プライベートを探られるのが嫌いなタイプなのだろうか。なんにせよ、仕事以外のことはたずねないほうがよさそうだ。
少し寂しく思いつつも、伊吹さんとはビジネスライクに徹しようと決めた。
二階の住居を見て回ると、お風呂とトイレ、狭めのキッチンがついていた。六畳の個室には、年季の入ったちゃぶ台と、小さめの箪笥がそなえつけてある。押し入れの中に布団もひとそろいあった。これだけあれば不自由せずに暮らせそうだ。
さすがに今日は疲れたので早めに寝ようと決める。コンビニの漬物とレトルトのご飯で作ったお茶漬けを食べ、お風呂に入り終わると、外はもうすっかり暗くなっていた。
濃紺の夜空には、まあるい栗きんとんのような月が輝いている。窓から空を見上げて、今日が満月だということに気づいた。