自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 無残に切り裂かれたクラーケンは徐々に薄くなり……最後は霧になって消えていった。水色に光る魔石がキラキラと輝きながら落ちてくるので、俺はすかさず拾う。

「倒した……の?」
 ドロシーはそっと俺の肩の上に顔を出し、聞いてくる。
「一発だったよ。どう? 強いだろ俺?」
 俺は美しい輝きを放つ魔石を見せながら、ドヤ顔でドロシーを見る。
「うわぁ……、綺麗……。ユータ……もう、言葉にならないわ……」
 ドロシーは圧倒され、軽く首を振った。

「大魔導士様! おられますか? ありがとうございます!」
 船から声がかかる。船長の様だ。
 隠ぺい魔法をかけているから、こちらのことは見えないはずだが、シールドに浴びた(スミ)は誤算だった。(スミ)は見えてしまっているかもしれない。
「あー、無事で何よりじゃったのう……」
 俺は頑張って低い声を出し、答えた。
「このご恩は忘れません。何かお礼の品をお贈りしたいのですが……」
 俺は浮かれてドロシーに聞く。
「お礼だって、何欲しい? 宝石とかもらう?」
 ドロシーは少し考えると、
「私は……特に欲しい物なんてないわ。それより、孤児院の子供たちに美味しい物をお腹いっぱい食べさせてあげたいわ……」
 と、俺を見つめて言った。俺は欲にまみれた俺の発想を反省し、
「そうだよ、そうだよな……」
 と、言いながら目をつぶってうなずく。
 パサパサでカチカチのパンしか無く、それでも大切に食べていた孤児院時代を思い出す。後輩にはもうちょっといいものを食べさせてあげる……それが先輩の責務だと思った。
 俺は軽く咳払いし、言った。
「あー、クラーケンの魔石はもらったので、ワシはこれで十分。ただ、良ければアンジューの孤児院の子供たちに、美味しい物をお腹いっぱい食べさせてあげてくれんかの?」
 船長はそれを聞くと、
「アンジューの孤児院! なるほど……、分かりました! さすが大魔導士様! 私、感服いたしました。美味しい料理、ドーンと届けさせていただきます!」
 そう言って、嬉しそうにほほ笑んだ。
 やはり、恵まれない子供たちに対する支援というのは人の心を動かすらしい。
 孤児のみんなが大騒ぎする食堂を思い浮かべながら、俺も今度、何か持って行こうと思った。







3-4. 右手の薬指

「では、頼んだぞ!」