自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「……。うん……」
「俺、実はすっごく強いんだ」
「……」
「だから、勇者と戦っても、王様が怒っても、死んだりすることはないんだ」
「……」
 いきなりのカミングアウトに、ドロシーは理解できてない感じだった。
「……、本当……?」
 ドロシーは涙でいっぱいにした目で俺を見つめた。
「本当さ、安心してていいよ」
 俺はそう言って優しく髪をなでた。
「でも……、ユータが戦った話なんて聞いたことないわよ、私……」
「この前、勇者にムチ打たれても平気だったろ?」
 俺はニヤッと笑った。
「あれは魔法の服だって……」
「そんな物ないよ。あれは方便だ。勇者の攻撃なんていくら食らっても俺には全く効かないんだ」
「えっ!? それじゃあ勇者様より強い……ってこと?」
「もう圧倒的に強いね」
 俺はドヤ顔で笑った。
 ドロシーは唖然(あぜん)として口を開けたまま言葉を失っている。
「あ、今日はもう店閉めて海にでも行こうか? なんか仕事する気にならないし……」
 俺はニッコリと笑って提案する。
 ドロシーは呆然(ぼうぜん)としたまま、ゆっくりとうなずいた。

       ◇

 俺はランチのセットを準備し、ドロシーは水着に着替えてもらった。
 短パンに黒いTシャツ姿になったドロシーに、俺は日焼け止めを塗る。白いすべすべの素肌はしっとりと手になじむほど柔らかく、温かかった。
「で、どうやって行くの?」
 ドロシーがウキウキしながら聞いてくる。
 俺は、用意しておいた防寒着を渡し、
「裏の空き地から行きまーす」
 そう言って裏口を指さした。

       ◇

 俺は店の裏の空き地のすみに置いてあったカヌーのカバーをはがした。
「この、カヌーで行きまーす!」
 買ってきたばかりのピカピカのカヌー。朱色に塗られた船体はまだ傷一つついていない。
「え? でも、ここから川まで遠いわよ?」
 どういうことか理解できないドロシー。
 俺は荷物をカヌーに積み込み、前方に乗り込むと、
「いいから、いいから、はい乗って!」
 そう言って、後ろの座布団をパンパンと叩いた。
 首をかしげながら乗り込むドロシー。
 俺は怪訝(けげん)そうな顔のドロシーを見ながらCAの口調で言った。