自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

「さて……私が生まれたのは二千年くらい前ですが、その頃にはすでにヌチ・ギさんはいましたよ。何のためにこんなことやってるかは……ちょっとわかりません。ちなみに私はヌチ・ギさんに作られました」
 
 なんと、アバドンの親らしい。魔物を生み出し、管理しているのだから当たり前ではあるが、ちょっと不思議な感じがする。

「ヌチ・ギさんは何ができるのかな?」
「森羅万象何でもできますよ。時間を止めたり、新たな生き物作りだしたり、それはまさに全知全能ですよ」
 なるほど、MMORPGのゲームマスターみたいなものかもしれない。この世界を構成するデータを直接いじれるからどんなことでも実現可能だし、何でも調べられる。
「俺じゃ勝てそうにないね」
「そうですね、旦那様は最強ですが、ヌチ・ギさんは次元の違う規格外の存在ですから、存在自体反則ですよ」
 そう言いながら肩をすくめる。
「まぁ、神様みたいなものだと思っておけばいいかな?」
 するとアバドンは、腕を組んで首をひねりながら言った。
「うーん、ヌチ・ギさんはこう言うとアレなんですが、ちょっと邪悪で俗物なんですよ」
「邪悪?」
「どうも女の子を生贄(いけにえ)にして楽しんでるらしいんですよね」
「はぁ!? それじゃ悪魔じゃないか!」
「彼は王都の王族の守り神的なポジションに()いていてですね、軍事や疫病対策や飢饉対策を手伝って、その代わりに可愛い女の子を提供させているんです」
「……。女の子はどうなっちゃうの?」
「さぁ……屋敷に入った女の子は二度と出てこないそうです」
「それは大問題じゃないか!」
「でもヌチ・ギさんを止められる人なんていないですよ。王都の王様だっていいなりです」
 俺は絶句した。この世界の闇がそんなところにあったとは。この世界はヌチ・ギと呼ばれる男が管理するMMOPRGのようなゲームの世界なのかもしれない。そして、その男は女の子を喰い物にする悪魔。でも、誰もこの状況を変えられない。何という恐ろしい世界だろうか。