自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 そもそも地球なんてどうやってコピーするのだろうか?
 一体これはどういうことなんだ?
 俺は眉間(みけん)にしわを寄せ、腕を組んで必死に考えるが……皆目見当もつかなかった。

「旦那様~! ご無事ですか~?」
 アバドンの声が聞こえる。
「無事だけど無事じゃない。今すごく悩んでる……。ちょっと戻るね」
 俺は情けない声で応えた。
 本当はこの世界を一周しようと思っていたのだが、きっと太平洋の向こうにはアメリカ大陸があってヨーロッパ大陸があってインドがあって東南アジアがあるだけだろう。これ以上の探索は意味がない。

        ◇

 広場に着陸し、アバドンにボルトを抜いてもらった。
「宇宙どうでしたか?」
 アバドンは興味津々に聞いてくるが、アバドンに日本列島の話をしても理解できないだろう。
「何もなかったよ。お前も行ってくるか?」
 俺はちょっと憔悴(しょうすい)しながら答えた。
「私は旦那様と違いますから、こんなのもち上げて宇宙まで行けませんよ」
 手を振りながら顔をそむけるアバドン。
「ちょっと、疲れちゃった。コーヒーでも飲むか?」
 俺は疲れた笑いを浮かべながら言った。
「ぜひぜひ! 旦那様のコーヒーは美味しいんですよ!」
 嬉しいことを言ってくれるアバドンの背中をパンパンと叩き、店へと戻った。

         ◇

 俺はコーヒーを丁寧に入れてテーブルに置き、アバドンに勧めた。
 アバドンは目をつぶり、軽く首を振りながらコーヒーの香りを堪能(たんのう)する。

 俺はコーヒーをすすりながら言った。
「ちょっと、この世界について教えて欲しいんだよね」

 アバドンは濃いアイシャドウの目をこちらに向け、嬉しそうに紫色のくちびるを開いた。
「なんでもお答えしますよ! 旦那様!」
「お前、ダンジョンでアルバイトしてたろ? あれ、誰が雇い主なんだ?」
「ヌチ・ギさんです。小柄でヒョロッとして()せた男なんですが……、彼がたまに募集のメッセージを送ってくるんです」
「その、ヌチ・ギさんが、ダンジョン作ったり魔物管理してるんだね、何者なんだろう?」
「さぁ……、何者かは私も全然わかりません」
 そう言ってアバドンは首を振る。
「彼はいつからこんなことをやっていて、それは何のためなんだろう?」