自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

  俺はまずアバドンを呼び出した。彼には爆破事件から再生した後、勇者の所在を追ってもらっている。

「やぁ、アバドン、調子はどう?」
 飛んできたアバドンに手をあげる。
「旦那様、申し訳ないんですが、勇者はまだ見つかりません」
「うーん、どこ行っちゃったのかなぁ?」
「あの大爆発は公式には原因不明となってますが、勇者の関係者が起こしたものだということはバレていてですね、どうもほとぼりが冷めるまで姿をくらますつもりのようなんです」
 勇者が見つからないというのは想定外だった。アバドンは魔人だ、王宮に忍び込むことなど簡単だし、変装だってできる。だから簡単に見つかると思っていたのだが……。

「ボコボコにして、二度と悪さできないようにしてやるつもりだったのになぁ……」
「きっとどこかの女の所にしけ込んでるんでしょう。残念ながら……、女の家までは調査は難しいです」
「分かった。ありがとう。引き続きよろしく!」
「わかりやした!」
「で、今日はちょっと手伝ってもらいたいことがあってね」
 そう言って俺は教会の鐘を指さした。
「旦那様、これ……何ですか?」
 怪訝(けげん)そうなアバドン。
「宇宙船だよ」
 俺はにこやかに返した。
「宇宙船!?」
 目を丸くするアバドン。
「そう、これで宇宙に行ってくるよ」
「宇宙!? 宇宙って空のずっと上の……宇宙……ですか?」
 アバドンは空を指さして首をひねる。
「お前は行ったことあるか?」
「ないですよ! 空も高くなると寒いし苦しいし……、そもそも行ったって何もないんですから」
「何もないかどうかは、行ってみないとわからんだろ」
「いやまぁそうですけど……」
「俺が中入ったら、このボルトにナットで締めて欲しいんだよね」
「その位ならお安い御用ですが……こんなので本当に大丈夫なんですか?」
 アバドンは教会の鐘をこぶしでカンカンと叩き、不思議そうな顔をする。
「まぁ、行ってみたらわかるよ」
 大気圧は指先ほどの面積に数kgの力がかかる。つまり、このサイズだと十トンほどの力が鉄板などにかかってしまう。ちゃんとその辺を考えないと爆発して終わりだ。でも、これだけ分厚い金属なら耐えてくれるだろう。