自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 ここまで管理できているということは、この世界はむしろ全部コンピューターによって作られた世界だと考えた方が妥当だ。そもそも魔法で空を飛べたり、レベルアップでとんでもない力が出る時点で、システムがデータ管理だけに留まらないことは明白なのだ。
 俺は『複雑すぎる世界は管理しきれない。だから、この世界は仮想現実空間ではない』と考えていたが、どうもそんなことはないらしい。誰も見てない池の中のプランクトンも、一つ一つ厳密にシミュレートできるコンピューターシステムがある、としか考えられない。
 俺は背筋に水を浴びたようにゾッとし、冷や汗がタラりと流れた。
「Welcome to Underground(ようこそ地下世界へ)」
 誰かが耳元でささやいている……。そんな気がした。
 俺はこの世界の重大な秘密にたどり着いてしまった……。

 俺はよろよろとテーブルの所へと戻り、冷めたコーヒーをゴクゴクと飲んだ。
「ユータ……、どうしたの?」
 真っ青な顔をした俺を見て、ドロシーが心配そうに声をかけてくる。
 俺は両手で髪の毛をかきあげ、大きく息を吐いて言った。
「大丈夫。真実は小説より奇なりだったんだ」
 ドロシーは何のことか分からず、首をひねっていた。

        ◇

 この世界はコンピューターによって作られた世界……みたいだ。だとしたらどんなコンピューターなのだろうか?
 この広大な世界を全部シミュレーションしようと思ったら相当規模はデカくないとならないはずだ。それこそコンピューターでできた惑星くらいの狂ったような規模でない限り実現不可能だろう。
 そもそも電力はどうなっているのだろう? 演算性能自体はコンピューターの数を増やせばどんどん増えるが、電力は有限なはずだ。俺はエネルギーの面からコンピューターシステムの規模の予想をしてみようと思いついた。

 一番デカいエネルギー源は太陽だ。実用性を考えれば、巨大な核融合炉である太陽を超えるエネルギー源はない。太陽系外だとしても恒星をエネルギー源にするのが妥当だろう。
 地球で太陽光発電パネルを使う時、一平方メートルで200Wの電力が取れていた。これは日本での俺のパソコン一台分に相当する。この太陽光発電パネルで太陽をぐるっと覆った時、どの位の電力になるだろうか?