自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 ドロシーが顔をあげて聞く。
「それは任せて、ドロシーは水着だけ用意しておいて」
「水着? 何それ?」
 ドロシーはキョトンとする。
 そう言えば、この世界で水着は見たことがなかった。そもそも泳ぐ人など誰もいなかったのだ。
「あ、()れても構わない服装でってこと」
「え、洗濯する時に濡らすんだから、みんな濡れても構わないわよ」
 ドロシーは服の心配をしている。
「いや、そうじゃなくて……濡れると布って透けちゃうものがあるから……」
 俺は真っ赤になって説明する。
「えっ……? あっ!」
 ドロシーも真っ赤になった。
「ちょっと探しておいてね」
「う、うん……」
 ドロシーはうつむいて照れながら答えた。

      ◇

 海が楽しみになったのか、ドロシーはひとまず落ち着いたようだった。そして、奥の机で何やら書類を整理しはじめる。
 俺は拡大鏡(ルーペ)を取り出し、池の水を観察することにした。
 窓辺の明るい所の棚の上に白い皿をおいて、池の水を一滴たらし、拡大鏡(ルーペ)でのぞいてみる……。

「いる……」
 そこにはたくさんのプランクトンがウヨウヨと動き回っていた。トゲトゲした丸い物や小船の形のもの、イカダの形をした物など、多彩な形のプランクトンがウジャウジャとしており、一つの宇宙を形作っていた。
 乳酸菌がいるんだから、それより大きなプランクトンがいることは想定の範囲内である。やはり、この世界はリアルな世界と考えた方が良さそうだ。こんなプランクトンたちを全部シミュレートし続けるMMORPGなんて、どう考えてもおかしいんだから。
 俺はしばらくプランクトンがにぎやかに動き回るのを眺めていた。ピョンピョンと動き回るミジンコは、なかなかユニークな動きをしていて見ていて癒される。こんなのを全部コンピューターでシミュレートする世界なんて、さすがに無理があるなと思った。





2-9. Welcome to Underground

「おーい、ドロシー! ちょっと見てごらん!」
 俺は手をあげてドロシーを呼んだ。
「何してるの?」
 ドロシーはちょっと怪訝(けげん)そうな顔をしながらやってくる。
「ここからのぞいてごらん」
 そう言ってドロシーに拡大鏡(ルーペ)を指さした。
「ここをのぞけば……いいのね?」