そう言いながら俺はうつむき、考え込んでしまった。この世界にも乳酸菌がある。しかし、MMORPGのゲームに乳酸菌などありえない。顕微鏡使わないと見えないものなどわざわざ実装する意味などないのだから。しかし、乳酸菌は『顕微鏡の中で生きている』と彼女は言う。この世界はゲームの世界じゃないということなのだろうか? では、魔法はどうなる? ここまで厳密に緻密に構成された世界なのに、なぜ死者が復活するような魔法が存在するのだろうか……。
「不思議な子ね。で、拡大鏡は要るの、要らないの?」
彼女は訝しそうに俺を見る。
「あ――――、一応自分でも色々見てみたいのでください」
俺は顔をあげて言う。
「まいどあり~」
彼女は棚から皮袋を取り出すと、拡大鏡を入れて俺に差し出した。
「はい! 金貨九枚に負けてあげるわ」
「ありがとうございます……」
俺は力なく微笑んで言った。
金貨をていねいに数えながら払うと、彼女は、
「良かったらアカデミーの教授紹介するわよ」
と、言いながら俺を上目づかいにチラッと見る。
「助かります、また来ますね」
俺はそう言って頭を下げ、店を後にした。
乳酸菌を実装しているこの世界、一人前のヨーグルトには確か十億個程度の乳酸菌がいるはずだ。それを全部シミュレートしているということだとしたら、誰かが作った世界にしては手が込み過ぎている。意味がないし、ばかげている。
となると、この世界はリアル……。でもドロシーは腕から生き返っちゃったし、レベルや鑑定のゲーム的なシステムも生きている。この矛盾はどう解決したらいいのだろうか?
帰り道、俺は公園に立ち寄り、池の水を観察用にと水筒にくみながら物思いにふけっていた。
2-8. トラウマを抱える少女
店に戻ると鍵が開いていた。
何だろうと思ってそっと中をのぞき込むと……、カーテンも開けず暗い中、誰かが椅子に静かに座っている。
目を凝らして見ると……、ドロシーだ。
ちょっと普通じゃない。俺は心臓を締め付けられるような息苦しさを覚えた。
俺は大きく息をつくと、明るい調子で声をかけながら入っていった。
「あれ? ドロシーどうしたの? 今日はお店開けないよ」
ドロシーは俺の方をチラッと見ると、
「不思議な子ね。で、拡大鏡は要るの、要らないの?」
彼女は訝しそうに俺を見る。
「あ――――、一応自分でも色々見てみたいのでください」
俺は顔をあげて言う。
「まいどあり~」
彼女は棚から皮袋を取り出すと、拡大鏡を入れて俺に差し出した。
「はい! 金貨九枚に負けてあげるわ」
「ありがとうございます……」
俺は力なく微笑んで言った。
金貨をていねいに数えながら払うと、彼女は、
「良かったらアカデミーの教授紹介するわよ」
と、言いながら俺を上目づかいにチラッと見る。
「助かります、また来ますね」
俺はそう言って頭を下げ、店を後にした。
乳酸菌を実装しているこの世界、一人前のヨーグルトには確か十億個程度の乳酸菌がいるはずだ。それを全部シミュレートしているということだとしたら、誰かが作った世界にしては手が込み過ぎている。意味がないし、ばかげている。
となると、この世界はリアル……。でもドロシーは腕から生き返っちゃったし、レベルや鑑定のゲーム的なシステムも生きている。この矛盾はどう解決したらいいのだろうか?
帰り道、俺は公園に立ち寄り、池の水を観察用にと水筒にくみながら物思いにふけっていた。
2-8. トラウマを抱える少女
店に戻ると鍵が開いていた。
何だろうと思ってそっと中をのぞき込むと……、カーテンも開けず暗い中、誰かが椅子に静かに座っている。
目を凝らして見ると……、ドロシーだ。
ちょっと普通じゃない。俺は心臓を締め付けられるような息苦しさを覚えた。
俺は大きく息をつくと、明るい調子で声をかけながら入っていった。
「あれ? ドロシーどうしたの? 今日はお店開けないよ」
ドロシーは俺の方をチラッと見ると、



