自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 美しく伸びたまつ毛、しっとりと透き通る白い肌、そしてイチゴのようにプックリと鮮やかな紅色に膨らむくちびる……。
 すると、ゆっくりと目が開いた。
「ユータ……?」
「ドロシー!」
「ユータ……、良かった……」
 そう言って、またガクッと力なくうなだれた。
 俺はドロシーを鑑定してみる。すると、HPが1になっていた。
 これは『光陰の杖』の効果ではないだろうか?
 
『HPが10以上の時、致死的攻撃を受けてもHPが1で耐える』
 確か、こう書いてあったはずだ。

 HPが1なのはまずい。早く回復させないと本当に死んでしまう。
 俺は焼け焦げた自分のパジャマを脱いでドロシーに着せ、お姫様抱っこで抱きかかえると急いで家へと飛んだ。
 寒くならないよう、風が当たらないよう、細心の注意を払いつつ必死に飛んだ。

 途中、アバドンから連絡が入る。
「旦那様! 大丈夫ですか?」
「俺もドロシーも何とか生きてる。お前は?」
「私はかなり吹き飛ばされまして、身体もあちこち失いました。ちょっと再生に時間かかりそうですが、なんとかなりそうです」
「良かった。再生出来たらまた連絡くれ。ありがとう、助かったよ!」
「旦那様のお役に立てるのが、私の喜びです。グフフフフ……」
 俺はいい仲間に恵まれた……。
 自然と涙が湧いてきて、ポロッとこぼれ、宙を舞った。

        ◇

「あらあら、実に面白い方だわ……」
 王宮の尖塔で、遠見の魔道具を持った少女がつぶやいた。少女は18歳前後だろうか、透き通るような白い肌にくっきりとしたアンバーの瞳……、そして美しいブロンドにはルビーのあしらわれた髪飾りを着けており、たぐいまれなる美貌を引き立たせていた。金の刺繍がふんだんに施された豪奢なワンピースの腹部にはヒモが編まれ、豊かな胸を強調している。かなり高い階級のようだ。
 彼女はたまたま街の上を飛ぶ人影をみつけ、気になってわざわざ魔道具を用意してユータの行動を追っていたのだった。まさか勇者の側近を叩きのめし、あの大爆発の中でも生き残って女の子救出するとは……、予想をはるかに超えたユータの力に彼女は驚嘆していた。
 彼女はサラサラと何かをメモると、

「バトラー!」
 と、叫び、執事を呼んだ。

「至急、この男を調査して! 面白くなってきたわよ!」
 ニヤッと笑って執事にメモを渡した。