自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 あの美しいドロシーが腕だけになってしまった。俺と関わったばかりに殺してしまった。
 なんなんだよぉ!
「ドロシー! ドロシー!!」
 俺はとめどなくあふれてくる涙にぐちゃぐちゃになりながら、何度も叫んだ。
「ドロシー!! うわぁぁぁ!」

 俺はもうすべてが嫌になった。何のために異世界に転生させてもらったのか?
 こんな悲劇を呼ぶためだったのか?
 なんなんだ、これは……、あんまりだ。

 絶望が俺の心を塗りたくっていった。
 俺はレベル千だといい気になっていた自分を呪い、勇者をなめていた自分を呪い、心がバラバラに分解されていくような、自分が自分じゃなくなっていくような喪失感に侵されていった。

      ◇

 死んだ魚のような目をして動けなくなっていると、ボウっと明かりを感じた。
「うぅ?」
 どこからか明かりがさしている……。ガレキの中の薄暗がりが明るく見える……。
 辺りを見回すと、なんと、抱いていた腕が白く光り始めたのだ。
「え!?」

 腕はどんどん明るくなり、まぶしく光り輝いていった。
「えっ!? 何? なんなんだ?」
 すると、腕は浮き上がり、ちぎれた所から二の腕が生えてきた。さらに、肩、鎖骨、胸……、どんどんとドロシーの身体が再生され始めたのだ。
「ド、ドロシー?」
 驚いているとやがてドロシーは生まれたままの身体に再生され、神々しく光り輝いたのだった。
「ドロシー……」
 あまりのことに俺は言葉を失う。
 そして、ドロシーの身体はゆっくりと降りてきて、俺にもたれかかってきた。俺はハグをして受け止める。
 ずっしりとした重みが俺の身体全体にかかる。柔らかくふくよかな胸が俺を温めた。
「ドロシー……」
 俺は目をつぶってドロシーをぎゅっと強く抱きしめた……。
 しっとりときめ細やかで柔らかいドロシーの肌が、俺の指先に吸い付くようになじむ。

「ドロシー……」
 華やかで温かい匂いに包まれながら、俺はしばらくドロシーを抱きしめていた。

 ただ、いつまで経ってもドロシーは動かなかった。身体は再生されたが、意識がないようだ
「ドロシー! ドロシー!」
 俺は美しく再生された綺麗なドロシーの頬をパンパンと叩いてみた。
「う……うぅん……」
 まゆをひそめ、うなされている。
「ドロシー! 聞こえる?」
 俺はじっとドロシーを見つめた。